子宮内膜症の薬は太るの?#906【リスナーからの質問

子宮内膜症の薬で体重が増加

先日、コメントにて子宮内膜症に関するものを頂きました。

去年からジェノゲストという、子宮内膜症のお薬を飲み始めたところ、特に心当たりが無く2キロほど増えた、というものです。

以前はピルを飲んでいたのを、血栓症予防のためにジエノゲストに変えたところ、体重が増えたとされています。

今回はこのコメントから、ジェノゲストや子宮内膜症についてまとめて行きたいと思います。

子宮内膜症とは

まず、今回のコメントで頂いた、子宮内膜症という病ですが、これは文字通り女性の子宮においてかかる病ですので、男性にはあまり馴染みがないかもしれません。

実は女性の約10人に1人がかかるとされている身近な疾患で、本来の子宮内膜という組織は子宮の内側だけに存在するものですが、子宮内膜症になると、この組織が卵巣や腹膜、腸など子宮以外の場所に発生します。

そして、健康であれば子宮内膜は生理の際に剥がれ、体外に排出されますが、子宮以外に存在する場合には排出されず、体内で炎症や癒着を引き起こします。これが子宮内膜症となります。

症状としては、生理痛が普段よりも激しくなるとか、下腹部痛、腰痛など、下半身への痛みが強まるのが特徴です。

最悪の場合、進行することで不妊の原因にもなりうるため、早期に対処することが重要です。

きっかけとしては生理痛の一つですので、我慢すればいいと捉えてしまうこともありますが、明確な疾患ですので、きちんとした治療が必要です。

子宮内膜症の明確な原因は解明されていませんが、遺伝的要因や免疫機能の異常、ホルモンバランスの乱れなどが関係していると考えられています。

割合としては12人に一人の方がかかっていると言われており、発症するリスクはありますので、普段から気を付けていただければと思います。

さらに、子宮内膜症は症状が進行するまで自覚が少ないこともあり、体調不良が続いて病院を受診した結果、子宮内膜症と診断されるケースもあります。なんとなく体がだるいとか、生理痛が年々ひどくなるといった不調も、実は子宮内膜症のサインである可能性がありますので定期的に婦人科へ行くなど、早めの対処が大切です。

子宮内膜症の治療方法

子宮内膜症の治療は、大きく分けて、痛みのコントロール、進行の抑制、妊娠希望への対応の3つが柱となります。

軽症であれば、まずは鎮痛剤で痛みを和らげて様子を見ることが一般的です。

もし症状が強い場合や進行している場合は、ホルモン療法が検討され、コメントでもあった低用量ピルや、後述する黄体ホルモン製剤であるジエノゲストなどを使います。

まず、ピルには卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方が含まれており、避妊目的だけでなく、生理痛の緩和やニキビ治療などにも使われています。

詳しくは後述しますが、ジエノゲストは子宮内膜症の治療に特化したお薬で、症状の割合や妊娠を希望されている方の場合は、手術とホルモン療法を組み合わせるなどで、治療をすることもあります。

子宮内膜症は基本的に、生理がある限り起こる病で、症状が無くなったからといって治ったとは断言できません。

前項に重なりますが、生理痛が重い場合はもちろんのこと、定期的に婦人科に行って検診をするのが安全です。

薬の使い分けについて

今回の本題となる、ジエノゲストというお薬についてですが、ピルよりも安全性を重視して、ジエノゲストに切り替えるということがあります。

ジエノゲストは卵胞ホルモンを含まないお薬で、黄体ホルモンのみで出来ているお薬で、排卵を抑えて子宮内膜の増殖を防ぐという作用があり、実際に副作用として体重増加やむくみが起きることがあります。

この原因は黄体ホルモンが体内の水分や栄養をため込む性質によるものです。黄体ホルモンは妊娠時の胎児のために、水分や栄養分を溜め込もうとする働きがあるため、黄体ホルモンが増えることで自然と太りやすくなります。

割合で言うとおよそ100人のうち5人ほどの方に起きる可能性があるとされています。

ジエノゲストは血栓症のリスクが低い点で安心感がありますが、確かに副作用として体重が増えるケースもありますので、自分に合った治療を選んで、無理のない形で向き合っていくことが何より大切です。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属