梅雨から夏に忍び寄る?!食中毒の正体と家庭でできる対策は?#905

食中毒に気を付けたい季節に

最近患者さんと、ちょっと目を離した隙に食べ物が悪くなってしまった、という話がありました。

患者さんいわく、ちょっと常温で出しておいただけで腐ってしまったとか、カビが生えてしまったということで、今年も食中毒の季節だと実感しました。

食中毒とは、何らかの細菌やウイルス、寄生虫などの有害な物が体に入って、腹痛や嘔吐、下痢、発熱といった症状を引き起こす病気の総称です。

特に梅雨から夏にかけての時期は、気温と湿度が高くなるため、細菌が繁殖しやすくなり、食中毒の発生件数が急増します。

食中毒も毎年、夏場には取り上げているかと思いますが、今回も今一度、是非気を付けていただければと思います。

食中毒の原因

夏場に多く見られる原因菌には、カンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157など)、黄色ブドウ球菌などがあります。

特にカンピロバクターやサルモネラ菌は、鶏肉や卵などの加熱不十分な食品に多く存在しており、カンピロバクターは鶏肉の生焼けが原因で感染しやすく、発熱・下痢・腹痛を引き起こします。サルモネラ菌も卵や肉類で増殖しやすく、嘔吐を伴うことが多いのが特徴です。

黄色ブドウ球菌は私たちの皮膚や傷口などに常在する細菌ですが、おにぎりなど素手で調理された食品を通じて毒素を作り、激しい吐き気を引き起こすことがあります。

ちなみに、ノロウイルスは冬に活性化しやすいため冬場の食中毒と言われることも多く、食べ物の自然毒としては毒性のあるキノコやフグの内臓が有名ですが、夏場に限ったものではないため今回は省略します。

食中毒になってしまったとき

もし、食中毒にかかってしまったと思ったときは、最も重要なのは無理をせず安静に過ごすことです。

併せて、吐き気や下痢によって大量の水分とミネラルが失われるため、脱水症状を防ぐために水分補給が必須となります。

特に大切なのは、OS-1のような経口補水液で、吸収が早く、電解質も一緒に補えるため、回復を早める効果が期待できます。

食欲がないときは無理に食事を摂る必要はなく、水分補給のみにとどめて、胃腸を休めることを優先してください。

そして安静にしている際は、下痢止めの服用は厳禁です。

下痢が出るのは体内の毒素や菌を排出するためですので、止めてしまうと症状の悪化や回復の遅れにつながります。

症状が収まって体力が戻って来始めたときは、すぐに油っこいものや生もの、香辛料の強い食べ物を食べるのは避けて、消化の良いものから少しずつ食事を再開すると、安全に治っていきますので意識してください。

病院にかかる目安

治療に際して、症状が軽度の場合は自宅での安静と水分補給で回復することが多いですが、38℃以上などで熱が特に高い場合や、下痢でも血便があったり、強い嘔吐や脱水症状がある場合は病院を受診してください。

特に幼児や高齢者の場合は症状が急変しやすく、回復に時間がかかるため、点滴や入院が必要になるケースもありますので、もしそうした場合はすぐに病院に行ってください。

ちなみに、ノロウイルスと同じように、食中毒は周囲に感染が広がることもあるため、トイレや食事の前後にはしっかり手を洗うとか、発症した方が家族にいる場合は出来るだけ他の家族と距離をとって、治るまで一旦隔離するのがベストです。

掃除についてもノロウイルスと同じく、嘔吐や下痢で汚れた場所には薄めたキッチンハイターなどの次亜塩素酸ナトリウム系の消毒剤を使うと、きれいに消毒されますので、感染拡大を防げます。

食中毒予防の3原則「つけない・増やさない・やっつける」

最後に食中毒の予防についてですが、つけない、増やさない、やっつける、という3つの原則が大切になります。

まず、つけないとは、細菌を食品に付着させないことで、例えば調理前・食事前・トイレの後の手洗いはもちろん、生肉や魚を扱った後の調理器具は分けて使用したり、食材ごとにこまめに洗って使用するとか、使用後は早めに洗剤や消毒剤でしっかり洗浄・殺菌することで、細菌を寄せ付けずに済みます。

増やさないは、食品を適切な温度で保存することで、冷蔵は10℃以下、冷凍はマイナス15℃以下が目安となります。

最後の、やっつけるは、加熱による殺菌です。

肉類は中心温度75℃以上で、1分間以上の加熱すると菌が死滅します。特に鶏肉やひき肉は火の通りにくい部分があるため、しっかりと中まで火を通すよう注意してください。

また前項に少し重なりますが、手指消毒や前述のキッチンハイターでの消毒も殺菌になりますので、是非意識して実施していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属