飲み物の「酸」で水筒の「金属」が溶ける?
前回、ビタミンCに関連して、酸について取り上げましたが、そのコメントにて「個人的に水筒に酸を含む飲み物を入れていることが気になります。」と頂きました。
ビタミンCや酸について取り上げるきっかけとなったのが、ビタミンC補給のために水筒にビタミンCの粉末を溶かして飲んでいる、という内容で、今回のはそれについてのコメントとなります。
実は確かに、水筒に酸味の強いものを入れると、水筒の内側のステンレスやアルミと言ったものが溶け出してしまい、その飲料を飲むことで金属中毒になるという事例がありました。
実際に、金属製の水筒にはスポーツドリンクを入れないように、と言う注意書きもありました。
今回は前回に続いて、飲み物と酸について触れて行きます。
実際に起きた金属中毒の事例
まず始めに、外で飲まれやすい、水筒に入れられる機会が多いスポーツドリンクですが、前回も少し出て来たようにいずれの種類のも基本的には酸性度が高く、phで言うと3.5ほどとなります。
これはレモン汁ほどの数字ではありませんが、1グラムのビタミンCを1ℓのお水に溶かすのと同じ程度の濃さになります。
実際に起きた事例としては、銅製の水筒に粉末を溶かして作ったスポーツドリンクを入れ、飲んでからおよそ5、6時間後に頭痛や吐き気が出て、金属中毒となったという事例が2008年に日本で起きています。
他には、2010年にアルミ製のやかんに乳酸飲料を入れてそれを飲んだ園児が吐き気の症状が出たとか、2020年には高齢者施設でステンレス製のやかんに粉末を溶かして作ったスポーツドリンクを入れて飲んだところ、吐き気や嘔吐の症状が出たという事がありました。
このように、容器の材質が水分に溶けだして、それを飲んでしまうことで健康被害が起こる、という事は現在でも起こり得るのです。
とはいえ、現在販売されている水筒の内部は、強力にコーティングされているため、スポーツドリンク程度の少し酸性の飲料を入れただけで簡単に金属質が溶け出すという事はまずありません。
ただし、洗剤やスポンジで洗ったときに内部に傷がつき、そのコーティングがはがれる場合があります。
そこに酸性の飲み物が接触して、溶け出してしまうという事があります。
前述の例はいずれも、数時間単位で水筒内に入っているため、飲むことで金属中毒が起こるほど溶け出したと考えられます。
やかんで水道水を沸かすと
ちなみに日本の水道水には、ほんのわずかに、健康被害が出ない程度に銅が含まれており、やかんで水道水を沸かしていると、その銅がやかんの中に少しずつ溜まっていきます。
通常は、銅がやかんの内部に溜まっていくだけで水に溶け込むことは無いため、それ自体は問題ありませんが、酸性の水分が触れてしまうと、その溜まった銅が一気に、水分の中に溶け込んでいくのです。
それが前述の、やかんによる金属中毒の事例となります。
ただ、金属中毒は健康な成人であればよほどの量を摂取しない限りは、大きな健康被害はほぼ起きませんが、やはり水筒ややかん内部の劣化、手入れには充分気を付けることをおすすめします。
金属製のたわしや硬いスポンジは控える
水筒ややかんによる金属中毒を防ぐには、やはり手入れをきちんと、慎重にすることに尽きます。
まず水筒はたわしや硬いスポンジを使うのは危険ですので、ボトルを洗うブラシなどを使ったり、場合によっては水でしっかりめにすすぐだけにするのも手です。
茶渋や水垢のようなものを漂白したいと言う気持ちも分かりますが、食器用の漂白剤でも水筒のコーティングをはがすことがあるため、やはり出来るだけ普通の中性洗剤で洗うようにするのが安全です。
また、水筒を外で落としたり、ぶつけたりするとその衝撃によって内部が傷つき、そこからコーティングがはがれることもあります。
さらに、長時間酸性の飲み物を入れているのも、少なからずダメージになっていくため、早めに飲んですぐ洗うとか、内部が汚れて来たと思ったら早めに買い替えるのも有効です。
外に持ち運ばないやかんの場合でも同様で、洗う場合は優しく洗ったり水ですすぐだけにするとか、何度も水道水を沸かして使っていると銅が溜まっていくため、酸性の飲み物を入れないようにする、と言う風に注意すると良いかと思います。