日ごろから気を付けたい「汗」
今年は6月末ごろに、異例とも言える猛暑日がありましたが、例年では夏本番を迎えるのはこれからの時期です。
熱中症対策も極めて重要ですが、身だしなみ的な意味も込めて気を付けたいのが「汗」の臭いです。
今回はこの汗そのものについて詳しく触れて行きたいと思います。
エクリン腺・アポクリン腺から体表に分泌される
体から汗が出るところは、エクリン腺とアポクリン腺がある場所、となります。
エクリン腺は腕や足、頭髪など一般的な汗の源になるもので、体の様々な部分に通っています。
手のひらにかく手汗も、手のひらにエクリン腺が通っているために分泌されています。
アポクリン腺は体の脇や陰部と言った限定的な場所にのみ存在しており、成長して思春期以降から働き、汗を出すようになります。
アポクリン腺が備わっているのに、子供のうちは汗を出さず、思春期以降に汗を分泌し出すというメカニズムは未だ解明されていませんが、フェロモンや女性ホルモンと関連しているという説が有力です。
汗が出る意味
汗の種類は3種類あり、体温を調節するための汗、精神的なものからくる汗、そして刺激物を食べた時の汗の3つです。
それぞれ説明すると、まずは体温を調節するための汗は正式には「温熱性発汗」と言い、温度の高い環境にいたり、運動をした際などで体温を下げようとする働きの一環として、汗を分泌させることです。
全体的に体温を下げようとするため、この時に主に働くのはエクリン腺です。
次の精神的なものからくる汗が精神的発汗と言い、いわゆる脂汗や冷や汗のことを指します。
緊張や不安といったストレスから出る汗で、これはエクリン腺からもアポクリン腺からも出ることがあります。
ちなみに手のひらや足の裏に汗をかくのは、人間がまだ素手素足で生きていたころ、手足の滑り止めとして分泌されるようになり、人間の進化の過程で身についたと言われています。
最後が辛い物を食べた時に汗をかくという、味覚的発汗で、特に顔や頭髪のエクリン腺から汗が出てくることが多いです。
汗は基本的には「無臭」
そもそも、実は汗そのものは、基本的には「無臭」です。
これはエクリン腺から出る汗もアポクリン腺から出る汗も、どちらも同様で99%以上は普通の水分、残り1%以下はカリウムやナトリウムと言ったミネラル分や、尿酸などの体の老廃物などで出来ています。
汗そのものには、においの元となる成分は基本的には入っていない、ということです。
汗が臭う大きな原因は皮膚についている脂、つまり「皮脂」や、皮膚についている汚れです。
皮脂や汚れが汗と混ざり、それを皮膚の表面にいる細菌が分解してエサとして使い、細菌の働きが活発になってにおいが強まります。
また、エクリン腺やアポクリン腺の機能が弱ると、汗そのものににおいがつくことがあります。
前述のように、本来であれば汗の中に1%ほどはミネラル分が含まれ、再吸収という形でそのまま再度取り込まれ、ミネラルとして使われていきます。
しかし、汗をかかない生活が続くと、取り込む力が弱まり、ミネラル分の濃度が高まります。
通常は99%が水分ですが、ミネラルが濃くなることで、徐々ににおいが強まってしまう、ということです。
太ってる人の汗の臭いが強い理由
太っている人は汗の臭いが強いイメージがあると思いますが、これはノネナールという物質によるためです。
ノネナールは、血中に脂肪酸という酸があり、これが酸化したときに生まれるにおい物質で、この物質が老廃物として、汗と一緒に体表に分泌されます。
太っている人は脂肪酸が血中に多いため、その分ノネナールの排出量も増えてしまい、においが強まりやすいのです。
他には、体力を消耗して疲れている人はアンモニアっぽいにおいが出やすいともされています。
アンモニアはタンパク質が分解されることで生まれる物質で、処理されると尿素という無臭の成分になり、汗と一緒に排出されます。
しかし、特に肝臓が疲弊していると処理が追い付かなくなり、アンモニアが血中に漂い、汗と排出されてしまい、体からアンモニアのにおいが出て来る、ということです。
ちなみに、自分の臭いは自分では気づきにくい、と言われがちですが、これは単純に自分が自分のにおいに「慣れ」てしまうためです。
においを伝える神経は、日常的にかいでいるにおいは脳に伝えなくなる働きがあるため、自分で注意していないと気付かなくなるのです。
日ごろから清潔にしておくこと
最後に汗の対策ですが、一言でまとめると「日ごろから清潔にしておくこと」に尽きます。
皮膚の表面に余分な皮脂や汚れがあることが、汗のにおいの最大の原因となりますので、しっかりと取り除いておくことがまず第一となります。
次に大切なのが、汗の質です。好ましいのは「サラサラの汗」で、カリウムやマグネシウムと言ったミネラルが滞りなく再吸収されていれば、ほとんどが水分になり、サラサラで薄くなります。
汗をかくことが少ないと、水分量が減り、ミネラル分が多くなるため汗が濃くなり、においが強まります。
運動量で言うと有酸素運動を30分以上行うと汗が出始めるので、可能であれば30分以上の運動時間をとるのがベストです。
夏の時期だと2,3時間も外にいれば自然としっかりと汗をかきますので、水分補給を忘れないように外で過ごすのも一つの手です。
最後に、汗のにおいを対策する商品や、お薬ももちろんあります。
例えば、主に脇用の製品で、余分な細菌を殺してにおいを抑える抗菌薬があります。
また、汗が出る量を減らす制汗剤や、逆にあえて臭いの成分をプラスすることで汗の臭いを打ち消す消臭剤などもありますので、興味があればドラッグストアや薬局で相談してみてください。