アトピー性皮膚炎の治療は?ステロイド外用剤は怖いの?#488

厄介な「アトピー性皮膚炎」

前回、乾燥肌という事を中心にお肌についてまとめて行きましたが、今回は前回割愛したアトピー性皮膚炎についてです。

割とメジャーで有名かと思いますが、このアトピー性皮膚炎について詳しくご紹介していきます。

神経細胞が、皮膚の近くまで来ている

アトピー性皮膚炎とは、非常に簡単に平たく言うと、お肌の角質層のバリア機能が弱い状態です。

前回のおさらいにもなりますが、お肌のバリア機能が弱まると、紫外線のような様々な刺激物質からお肌を守ろうと、免疫細胞が活性化して、アレルギー反応になり炎症となって、かゆみや痛みが起きます。

このバリア機能が、そもそもの体質的に弱いと、その分アレルギー反応が起きやすく、かゆみが出やすい、という事です。

そしてもう一つ特徴的なのが、アトピー性皮膚炎はかゆみを感じる神経細胞が、通常よりも皮膚の近くまで伸びているという点です。

つまり、一般的なお肌よりも、ものすごくかゆみを感じやすい体質、という事です。

以前、かゆみについて触れた回でもお伝えしましたが、かゆみという反応はかなり厄介で、かゆいからといってその部分を触り、かいてしまうとその分、その部分のお肌にダメージになります。

すると、バリア機能が一層低下していきますので、同時に刺激物質も入りやすくなり、アレルギー反応が強まるという、悪循環になるのです。

voicyでは400回と402回で、かゆみについて詳しくお話しているので、併せてそちらもご覧いただければと思います。

刺激物質だけではなく、ストレスも症状が悪化する一因に

刺激物質とは紫外線や、黄色ブドウ球菌と言う、一般的な生活環境に存在する雑菌類、体を動かしてかいた汗、ハウスダストやペットからの物質があります。

また、肌荒れにはストレスが大敵、と言われていますが、これはアトピー性皮膚炎でも全く同様で、ストレスがかかることでかゆみが強くなる事もあります。

ちなみに、一昔前には食べ物のアレルギーがある子供は、アトピー性皮膚炎を起こしやすい、と言われることがありましたが、実は最近の研究ではそれは逆であることが分かってきました。

アトピーによってお肌のバリア機能が弱く、刺激物質に過敏になっている状態のところに、不用意にこぼすなどして、何らかの食べ物が触れてしまうと、体がそれに対して過敏に反応してしまい、その食べ物がアレルギーになるのです。

アトピー性皮膚炎の治療に必要な「三本柱」

アトピー性皮膚炎の治療は、3つの柱で構成されています。

スキンケア、薬物治療、悪化原因を除去する、という3つです。このどれが欠けても良い治療にはなりません。

アトピー性皮膚炎は非常に慢性的で、何度も繰り返し起こるので、まずはこの3つを入念に行って治療をして、治った後は再発防止のために、長期的に続けて行くことが必要です。

まずスキンケアは文字通りお肌のケアのことで、しっかりと保湿してください。前回の乾燥肌の際にも重なりますが、保湿はアトピーの再発防止のためにも必要なので、継続して行います。

次の薬物治療は、かゆみどめ、ステロイドの外用剤を使います。お薬を使ってかゆみをしっかりと抑える、炎症を引かせるのが大切です。

前項や以前のかゆみの回にも通じますが、かいてしまうと、症状を悪化させる大きな原因になるので、かゆみが出たらすぐにお薬を使ってください。

かゆみと言う症状は意外にも、日常生活にかなり支障をきたすもので、睡眠に影響があるとか、勉強や仕事に集中できず効率が悪くなる、と言った影響が出ますので、もし不安があれば是非、家に一つかゆみ止めのお薬を常備しておいてください。

かゆみ止めと同時に、ステロイド外用薬があると、皮膚で起きているアレルギー反応を素早く鎮められるのでこちらも併せて使ってください。

ステロイドと聞くと不安に思われる方もいると思いますので、後述でもう少し詳しくまとめて行きます。

何が原因で悪化するのか、症状が強まるのかを見極めて、取り除く

最後の3つ目の、悪化原因を除去する、という点ですが、これは前述した外部刺激となるものを極力、身の周りから取り除くという事をします。

黄色ブドウ球菌を取り除くというのは、体内にもある雑菌ですのでほぼ不可能ですが、例えばこまめに掃除をしたり、加湿器や空気清浄機を使う、こまめに換気をしてハウスダストを取り除く、ということです。

後意外に刺激物質になるのが、体から分泌された汗です。

肌着や寝巻、また寝具のシーツや枕カバーと言ったものをこまめにとりかえることで、皮膚に余分な汗や皮脂が付かないように対策できます。

これはあせもの対策にもつながるので、是非普段から心掛けてみてください。

アトピー性皮膚炎の治療にはステロイド外用剤が欠かせない

アトピー性皮膚炎の治療には、ほとんどのケースでステロイド外用剤を使います。

特に、お子さんのアトピーの治療に使うことが多いですが、副作用が強いというイメージが未だに根強く、成長が妨げられるとか、免疫力が下がる、様々な病気の原因になる、という事がしばしば言われます。

確かにステロイドという名前でくくると、そういった副作用がある場合もありますが、アトピー性皮膚炎の治療で使う塗り薬においては、わざと起こそうともしない限り副作用が起きることはありません。

起こそうとする、というのは、お子さんに向かって子供用ではないレベルの強力なものを塗るとか、皮膚の薄い場所に、必要も無いのにむやみに何度も塗りたくる、と言ったような使い方です。

いわば、間違った使い方をしなければ、副作用は起きないと思って頂いて問題ないのです。

お薬を確認して、お医者さんの指示通りに使えば大丈夫です。

しかし、ステロイド外用薬を使っていたら、その部分がどんどん黒ずんできた、という方も居ると思います。

実はそれは、ステロイドを使い続けることで黒くなったのではなく、炎症が長引いていたために、その部分が黒ずんでしまったのです。

ですので、そのまま再発しないようにもうしばらくステロイド外用薬を使えば、きちんときれいに治っていきます。

ステロイド外用薬による治療中にお肌が黒ずむのは、塗り方が甘いとか使っている薬が症状に対して弱すぎる可能性があります。

また関連して、実際に皮膚の厚みが若干薄くなるとか、ニキビができやすくなるという副作用は、ステロイドの塗り薬でも起こり得ます。

そうしたことを防ぐには、皮膚の状態に合わせて、症状の程度に合わせてステロイドの強度を変えるとか、使うペースを下げていく、という事をします。

もし、ステロイドのお薬を使ったうえで、お肌の黒ずみなどの反応が出たら、皮膚科のお医者さんに相談してみてください。

ステロイド外用剤は、使うのを辞めたらすぐに元に戻ってしまう?

もう一つ、ステロイドのお薬でしばしば言われるのが、使っている最中はすぐに効いて治るけど使うのを辞めたらすぐに元に戻って、症状が再発してしまう、といったことです。

これはどういうことかと言うと、単純に、皮膚の深いところまで成分が届いておらず、治っていないために再発するのです。

薬の成分が届いていないという事は、使うのを辞めれば簡単に元に戻ります。
なので治りきるまで、お医者さんの指示に従ってしっかりと塗り続けることが必要です。

アトピー性皮膚炎を治して行くためには、ステロイド外用薬を使いこなせなければなりませんが、確かに他のお薬よりは扱いが難しい種類になります。

もしお薬について不安なことがあれば、かかりつけのお医者さんか薬剤師まで、気軽に相談していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属