ベンゾジアゼピン系の薬って?【リスナーからの質問】#399

ベンゾジアゼピン「系」のお薬

今回はお薬について頂いたコメントで、ベンゾジアゼピン系のお薬についてのお話です。

頂いたコメントは、パニック障害の治療で「ソラナックス」と言うお薬を服用しており、ベンゾジアゼピン系のお薬の一つとなるソラナックスを長期服用すると、体にマイナスな影響があるのでは?、といった内容です。

「系」ですので、以前のステロイドのように、その系統のお薬がいくつか存在します。

今回はこのベンゾジアゼピン系のお薬について、少し触れていきたいと思います。

精神安定剤・睡眠薬で多く見られる

コメントで、パニック障害を患っており、とあるように、ベンゾジアゼピン系のお薬は精神安定剤や睡眠薬のお薬でよく見られるタイプになります。

実際どっちなのか?とたまに言われますが、系統ですので精神安定剤としてのもの、睡眠に効果があるもの、どちらのタイプも存在します。

どういう仕組みかと言うと、まず、脳の中に脳の興奮を抑える部位があります。

これをベンゾジアゼピン受容体と言い、これに作用するお薬を全て、ベンゾジアゼピン系のお薬、と呼称しているのです。

お薬がその部位につくと、脳の興奮を抑える働きがあるGABAが分泌されて、落ち着いてくるという事です。

なので、この系統のお薬の作用は全て、脳の興奮を抑えたり、緊張をほぐすものです。

具体的には4つあり、眠くなってくる催眠作用、気持ちが落ち着く抗不安作用、肩や腰など筋肉を緩める作用、けいれんを抑える作用です。

お子さんで多い、熱性けいれんという発熱時にけいれんを起こしてしまう症状でも、ベンゾジアゼピン系のお薬を使うことがあります。

また抗不安作用では、例えばストレスや緊張でおなかの調子が悪くなるとか、動悸がすると言った症状の改善に役立ちます。

超短時間型・短時間型・中間型・長時間型の4種類

もう一つ大きな特徴が、お薬が効く時間で種類分けされている点です。

ベンゾジアゼピン系のお薬は時間での分類もされており、効く時間が短いお薬になるほど、効果の切れ味が良いという特徴があります。

ただ、単に薬が強い弱いというものではなく、時間と効果の兼ね合いがはっきりしているお薬が多い、ということですので注意してください。

このことは次の副作用、依存性にも深くかかわってくる部分になります。

ベンゾジアゼピン系のお薬の副作用

副作用についてですが、まずはやはり、日中眠くなるということがあります。

睡眠薬としても頻繁に用いられるお薬ですので、当然と言えば当然ですが、不安に対して作用するタイプのお薬であったとしても、副作用として眠気が出ることがよくあります。

また、睡眠薬として飲んでいても、日中も薬が残っていて効いてしまって、起きてからも眠気が続くということももちろんあります。

こうした副作用の時は、すぐにお医者さんや薬剤師に相談してみて、お薬の量を減らして調整する必要があります。

眠気以外の副作用だと「ふらつき」が起こることがあります。

なぜかと言うと、肩こりや腰痛の治療のためにベンゾジアゼピン系のお薬を使うと、その辺りの筋肉が緩みますが、他の部位の筋肉も少なからず緩んでしまうため、ふらつきが副作用として出ることがしばしばあります。

これで一番困るのが夜に目が覚めてトイレに行くときです。

寝る前にベンゾジアゼピン系の睡眠薬を飲んで、トイレで目が覚めると、筋肉が緩んでいる状態でトイレに行くことになります。

高齢者の方だと、これで転んでしまって骨折をするなど、重大なケガにつながる可能性があります。

ちなみに、高齢者の方とベンゾジアゼピン系のお薬ですが、飲み続けるとボケるのでは?、と言われることがたまにあります。

認知症、と考えると違いますが、認知症と似たような症状が副作用として出ることは実際あります。

高齢者の方で長く飲み続けると、ボケるとか認知症になるというわけではありませんが、似たような症状は出ます。

例えば、徐々に表情が無くなって動きも衰えて寝たきりになるとか、逆に感情が高ぶりやすくなって急に怒るようになるとか、考えることが徐々に遅くなっていく、と言ったものです。

ほぼ認知症と同じ症状で、高齢者が長く飲み続けることで出やすいという特徴はありますが、あくまでも副作用ですので、飲むのをやめると症状が改善されます。

もし、高齢者の方で、ベンゾジアゼピン系のお薬を使っている最中に、これらの症状が出たら、お医者さんに相談して量を減らしたり、他の薬で代用したりで、対処してみてください。

この認知症の症状以外にも、お薬を飲むのをやめることで改善される症状はいくつかありますので、何かあれば是非お医者さんや薬剤師に相談してください。

ベンゾジアゼピン系のお薬の依存性

依存性についてですが、やはり、あると言えばある、となります。

以前は多い量を長期間飲み続けると依存性になると言われていました。

現在では、通常のお医者さんから処方される量であっても、依存性になることが分かっています。

ただし、止め方にさえ気を付けておけば、問題無く使用できます。

一番やってはいけないのが、急にお薬を止めることです。

ピタっと飲むのをやめると、不安が急に来て、強い震えや動悸となって現れます。

なので、充分に時間をかけて、少しずつ量を減らすとか長時間効くものに変える、違うお薬にしてベンゾジアゼピン系のお薬から置き換える、と言った対策があります。

飲んでいたところで、急に飲まなくなるというのは絶対にやめてください。

メリットは充分存在する

使うのが難しいお薬と思われそうですが、一時的にであれば使うメリットは充分あります。

例えば調子が悪い時だけ短期間、頓服的に使って、徐々に量を減らしていけば問題なく使用できます。

ただ、飲む量を勝手に増やさないこと、突然飲むのを止めるというだけはしないでください。

必ず、お医者さんと薬剤師の言う量を守って、相談しながら飲むようにしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属