迷信?それとも真実?腹八分目って健康に良いの?#464

Voicy更新しましたっ!

今回は前回に続いて、知っておきたい「腹八分目」という言葉について

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「腹八分目」ってことわざ?慣用句?

今回は前回少しだけ触れた「腹八分目」という言葉についてです。

文字通り、お腹いっぱいになるまで食べるのではなく、食べたくても8割ぐらいで止めておくという意味ですが、この始まりから根拠まで、詳しく掘り下げていきたいと思います。

食欲が増す今こそ、是非覚えてみてください。

 

正式には「腹八分目に医者いらず」

もとは「腹八分目に医者いらず」という風に言われており、これが時代とともに略されて「腹八分目まで」と言われるようになりました。

意味はそのまま、今使われているのと全く同じですが、実はこの「腹八分目に医者いらず」にはさらに続きがあります。

それは「腹八分目で医者いらず、腹六分目で老いを忘れる、腹四分目で神に近づく」です。

この言葉の始まりはヨガの教義から来ており、簡単に言えば仏教的なお話、言い伝えが起源ということになりますが、ヨガと関わりが薄い英語圏でもFeed by measure and defy the physician、「適度に食べて医者を無視せよ」ということわざがあります。

もちろん中国等アジアでも似たような言葉はあり、世界中でこのような言葉があります。

 

江戸時代には既に存在していた概念

日本では、日本最古の健康本と言われている「養生訓」という本があり、これにすでに「腹八分目」の概念が書かれています。

簡単に説明すると、食事の量が少ないと日にゆとりができて元気が巡りやすく、食べ物の消化がしやすくて飲食したものが全て栄養分になる。したがって病気になることがまれになり体も強くする、と言う内容です。

そして加えて、満腹にすると元気の廻りをふさぎ、消化しない、とあります。

満腹になると飲食したものが滞って、元気な道をふさいで病になる、という事です。

当時の食生活と栄養状態を考えると確かに食べ過ぎは危険で、おそらく今よりも食べ過ぎによる病のリスクは高かったように思えます。

 

「腹八分目」の科学的根拠

さて、食べ過ぎは危険なのはその通りですが、実際に言い伝えられている「腹八分目」という事を科学的に考えて根拠はあるのかと言うと、マウスで実験したデータも、人間で実験したデータもあります。

まずマウスの方は、好きなだけ食事がとれるグループと、食事量を普段の80%にしたマウスのグループとで分けて観察したところ、8割の食事量にしたグループのマウスは、好きなだけ食べた方のグループのマウスに比べて1.5倍長生きしました。

そして人間の方は、これはアメリカでの実験ですが、コロニーという限られた空間の中で自給自足で生きるという実験の最中に、腹八分目が分かったということがあります。

実験途中、計画の間違いが判明して、成人の既定のカロリー数を食べると食糧が足りなくなり、最初の計画が達成できないということが分かりました。

そこで食事量を当初の計画の75%にして、カロリー数で言えば1800kcalに抑えた生活に切り替えました。

そうしたら、その後、実験で生活している人達の体重が減り、併せてコレステロールや中性脂肪、その他の数値も正常に近づいていき、さらに見た目も若くみえるようになった、という報告があります。

さらにもう一つ、2000年に発見された若返り遺伝子とか、長寿遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」と言う遺伝子が、摂取カロリーが75%程度なのが3週間続くと活性化することが分かっています。

サーチュイン遺伝子は普段眠っていて働きが鈍いですが、活性化することで活性酸素を除去するとか、脂肪燃焼の助けができます。

腹六分目で老いを忘れるといううのはこのことから来ているとも考えられます。

 

腹八分目にするには

八分、六分と言っても、実際どう判断するのかおそらく全く分からないと思います。

きっちり食べる量やカロリー量を計算するのも一つですが、簡単にできるのは最初に「満腹の少し手前」を目指して、そこから徐々に減らして行くと分かりやすいと思います。

まだもう少し食べられるけどここで辞めておく、ことを意識してみてください。

例えば食後のデザートを止めるとかですが、いきなり我慢するのは辛いと思います。

なので、八分でも満腹になりやすいようにするのがベストですが、これをするには食べ方にポイントがあります。

以前も食事や早食いについて触れたことがありますが、簡単に言うと満腹中枢が刺激されると、満腹というサインが出て食べられなくなりますが、この満腹中枢が刺激されるまで、およそ20分はかかるとされています。

ですので、時間をかけてゆっくり食べることで満腹中枢に刺激が行くようにすることで、通常よりも腹八分目に抑えられます。

逆に、早く一気に食べるとそれだけおなかに詰まって行ってしまう、となります。

ゆっくり食べるためには、きちんと噛むことが一番重要で、一口食べたら30回ぐらい数えてしっかり噛むとか、一口食べたら一旦箸を置いて味わうようにするのももちろんおすすめです。

 

温かい汁ものを、最初に飲むとさらに良い

食べるものについてですが、ダイエットと言う観点ではないので何でも構いませんが、一つポイントがあるとしたら、温かい汁ものを最初に口にすることを意識してみてください。

最初に食べることで、内臓が温まって消化の準備に入り、胃腸も活性化されます。

コース料理でメインの前に必ずスープ系のものがでるのは、胃腸の準備のためということでもあります。

食べ過ぎないように、こうしたことを意識して、秋冬と過ごしてみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属