アレルギーのある方が増えている
最近、アレルギーを持つ人が増えているように感じます。
前回取り上げた咳喘息もアレルギー反応の一つですが、そもそも咳喘息という症状自体、以前はあまり知られておらず、珍しいものでした。
昔に比べると、風邪は治っているはずなのに咳だけが長引く患者さんも多く、知り合いとも、昔はこんなにアレルギーの人はいなかったのに、という話になったこともあります。
今回は今一度、アレルギーという反応、症状について考えてみたいと思います。
アレルギーとは
アレルギーとは、体を守るための免疫システムが、無害なものにも過剰に反応してしまう、という状態のことです。
免疫とは本来、ウイルスや細菌といった有害なものから体を守る重要なシステムですが、アレルギーは本来無害な花粉や特定の食べ物といったものに反応し、体を守ろうとします。
例えば、花粉症やアトピー性皮膚炎、咳喘息などが代表的なアレルギー疾患です。
強いもので言うと、食物アレルギーのピーナッツ、そばといった食品では、命に関わるほど強い反応を引き起こすこともあります。
症状としては、くしゃみや鼻水、かゆみ、腹痛といったものから、重大なものでは呼吸困難やアナフィラキシーショックまで、多岐にわたります。
現在の日本では、全人口の3人に1人が何らかのアレルギーを持つと言われています。
アレルギーが増えた理由
アレルギーは、免疫システムの不具合ということは分かっていますが、実際にどういった仕組みによって起きているかはまだ未解明です。
ただし、幼少期の環境が、将来のアレルギーの発症リスクに関わっていることは明らかになっており、中でもアレルギーが増えた原因として注目されているのが、衛生仮説です。
衛生仮説とは、現代の清潔すぎる生活環境がアレルギーの増加に繋がっているという説で、1980年代から提唱されており、現在も研究が続けられています。
これは簡単に言うと、先進国ではアレルギーの患者さんが多く、発展途上国ではアレルギーの患者さんは極めて少ない、ということです。
例えば先進国では抗菌薬の使用や、清潔な環境が一般的になっているため、幼少期に病原体や微生物に触れる機会が著しく減少しており、それによって免疫システムが適切に発達せず、無害な物質にも過剰に反応してしまうことがあります。
反対に衛生環境が先進国に比べて未整備の途上国では、幼少期から様々な微生物に触れることで、免疫システムが充分に発達し、アレルギーが起きることが少ない、という説です。
この仮説は、都市部のお子さんが農村部のお子さんよりもアレルギーを発症する率が高い、という研究結果でも明らかになっており、支持を集めています。
また当然、不衛生な環境によって、重大な感染症になり、命の危険があるケースもあるため、一概に良いとは言えません。
子供の内から様々な微生物に触れてみる
完全にアレルギーを予防する方法はまだ確立されていませんが、リスクを減らすことは可能です。
前述の衛星仮説に通ずることですが、幼少期に自然環境に触れる機会を増やしたり、適度な外遊びを取り入れることは免疫システムの発達に役立つとされています。
ただし、清潔すぎるのは問題、と考えて、意図的に不衛生な環境を作ったり、清潔にしすぎないようにするのは、危険ですので避けてください。
あくまでも適度な範囲で外遊びをしたり、動物と触れ合ったりといったことをしてみてください。
そして食物アレルギーに関しては、お子さんの成長に合わせて、多様な食材を取り入れて、普段の運動や睡眠といったこともしっかりととって、バランスの良い食事を心がけることが重要です。
すでにアレルギーがある場合は、自分のアレルギーの傾向や症状を理解して、どういった場面で反応が出やすいのか把握することが、うまく付き合うための鍵になります。
同じアレルギー物質に触れても、体調によって発症する場合としない場合があるので、体調をきちんと整えていくことが大切です。
アレルギーはまだ解明されていない部分も多く、対処が難しいこともありますが、日常生活でできる工夫を取り入れると、より快適な生活を送ることができます。