血液検査の「フェリチン」という値
先日、貧血についてのコメントを頂きました。
鉄剤をしばらく飲んでも鉄分の値や白血球数は一切変わらなかったものの、フェリチンの値は上がったため、鉄剤を飲むのを辞めた、というものです。
今回はこのフェリチンについてのコメントから、貧血についてを中心にまとめて行きたいと思います。
貧血という症状
まず貧血とは、簡単に言うと血液中の赤血球や、その中に含まれるヘモグロビンが不足している状態のことです。
貧血状態では全身に十分な酸素が行き渡らず、様々な体調不良を引き起こします。
そして、フェリチンとは、体の中の鉄分を貯蔵できるタンパク質の一種です。
鉄分は人間の体にとって非常に重要ですが、実は鉄そのものを直接貯蔵することはできません。
そこで、一度フェリチンというタンパク質に取り込まれる形で、主に肝臓や脾臓、骨髄に留まり、必要に応じて分解して、ヘモグロビンを作ります。
このフェリチンの値を調べることで、体内にどれぐらいの鉄が貯まっているかが分かり、値が低い場合は鉄不足が進行している可能性があり、貧血を引き起こすリスクが高いことが分かります。
ちなみに、フェリチンとヘモグロビンは別の物質ですので、ヘモグロビン値は正常でもフェリチン値は低下しているということもあります。その場合は、今は大丈夫でも今後貧血を起こす可能性が高い、という状態になります。
近年の日本の女性で、20代から40代の方はフェリチンが減少しているという傾向があると言われていますので、心当たりのある方は注意してください。
貧血の治療と注意点
鉄欠乏性貧血の場合は、文字通り鉄分を補う治療が最善ですが、一概にそれだけでは不十分なこともあります。
例えば、鉄剤は飲むのが難しく、吐き気や便秘といった副作用が生じることもあり、服用を続けられない場合もあります。
ただ最近では、吸収のスピードがゆるやかな鉄剤も開発されているため、以前のものと比べると副作用が軽減されていることもあります。
また飲み方でも、寝る前に飲むようにすると症状が少なくなったり、場合によっては子供用のシロップタイプを飲むことも可能です。
もちろん食事からでも鉄分補給は可能で、魚やお肉類からとれるものをヘム鉄と言い、ホウレンソウなど植物に多いのが非ヘム鉄で、どちらかと言うとヘム鉄の方が吸収されやすいです。
最も吸収されやすいのはお肉のレバーで、非ヘム鉄のホウレンソウなどはビタミンCや胃酸が多いと吸収されやすいため、意識してみてください。
鉄以外が原因の貧血
最後に、鉄不足以外の貧血についてですが、その原因は非常にたくさんあります。
例えば、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)というものがあり、ビタミンB12や葉酸が不足することで、正常な赤血球ができず、貧血が引き起こされるというものです。
また、溶血性貧血では、赤血球が通常よりも早く破壊されてしまい、貧血に陥るということですが、これはいわゆる自己免疫疾患の一つとも言えるタイプです。
さらに、再生不良性貧血は、骨髄の機能が何らかの原因で低下してしまい、白血球と血小板が十分に作られなくなるという病もあります。
これらも種類としては貧血になりますが、それぞれ原因が変わりますので、適切に治療していく必要があります。
場合によっては、白血病のような重大な病の可能性もありますので、もし貧血症状が出たと思われる場合は早めに医療機関で原因を調べてもらうようにしてください。