熱帯夜はなぜ寝苦しいの?#634

暑いと寝苦しくなる理由

今年も7月が終わり、お盆や夏休みを迎える季節になってきました。

夏の暑さによる弊害は様々ありますが、今回取り上げるのは「熱帯夜」です。

暑いとなかなか寝付けないということは、老若男女問わず誰しもが経験あると思います。

今回はこの熱帯夜の仕組み、寝付けないメカニズムについて詳しく触れて行きます。

深い眠りにつくための3つの条件

人間が深い眠りにつく際に大切な、3つの条件があります。

体温体内時計、そして疲労です。

まず体温ですが、一昔前の映画やドラマの雪山のシーンで「寝たら死ぬ」というものが出て来たと思います。

寒い中で寝ると死ぬ、ということですが、これは体温が下がると眠くなる働きがあるためです。

厳密には脳の温度が0.5度下がることで、眠気が来るようになっています。

二つ目の体内時計は、自律神経のお話しにも関連してきますが、朝日を浴びると体内時計がリセットされますが、リセットされてから14時間後に眠りを促す物質が分泌されるようになります。

夕方あたりから徐々に分泌され始めて、起きてからトータルで14時間後には眠りにつくというのが理想的な生活リズムとなります。

最後の疲労は、一言で言えば疲れたら自然と眠くなる、ということで、疲れた時に出る疲労物質に眠りを促す働きがあるため、疲労物質が出ているかどうかが、眠れるかどうかにも影響してきます。

このうち、熱帯夜に大きく関わるのはやはり最初の、体温にあります。

冷え性だと特に眠りづらい理由

体は寝る際に、脳の温度を下げるべく、体の表面に血液を集めて体温を冷まそうとする働きをします。

小さい赤ちゃんがいる方はご存知かもしれませんが、赤ちゃんは眠くなると体が熱くなります。

これは皮膚の表面に血液を集め、冷ましたうえで脳の温度を下げて眠りにつこうとしているためです。

この働きがあるため、元々血流があまりよくなかったり、冷え性で体温が低めという場合では、体表に血液があまり行かず脳の温度が下がらず、より寝苦しくなるということが起きるのです。

熱帯夜でも快適に寝付く対策は、体温の調節と部屋の環境、そして水分補給が大切です。

水分補給と室温調節で対策を

寝ているときは、トータルでおよそコップ1杯分ほどは汗をかき、水分が失われるとされています。

汗がかけると体を冷ませますが、汗があまり出ないと体温調節が難しくなり、寝苦しさにつながります。

夜にトイレに起きたくないからと言って、寝る前の水分補給を躊躇する方もいますが、体温調節ができれば熟睡しやすくなるため、結果的に起きずに済むこともあります。

次に室温についてですが、温度が25度から26度、湿度が50%以下程度が望ましいですが、節電やエアコンの有無なども考えると難しい方もいると思います。

その場合は部屋のドアを開けたり、扇風機を上向きにして使ったりと、風を回して温度や湿度が一定にならないようにしてください。

この他だと、普通の睡眠や自律神経の事にもつながりますが、お風呂にきちんと入るとか、朝日を浴びて体内時計をリセットして、夜に寝やすくするのも大切です。

また当然、スマホやパソコンの画面から出るブルーライトも、睡眠の妨げとなりますので、出来るだけ控えてください。

不眠でお医者さんに診てもらうとき

最後に、様々な対処法をしても、眠りが改善されないというとき、お医者さんにかかることもできます。

診てもらう目安は主観で問題ありません。

ここしばらく気分よく寝た感じがしないとか、なぜか自然と早く起きてしまうなどの症状があり、いくつか対処法をやってみても改善されないというときは遠慮せずにお医者さんにかかってみてください。

睡眠についてかかる科は、明らかにストレスによるものであれば心療内科や精神科へ、そういったものが無い場合や、心当たりが無く原因が分からないときは内科で大丈夫です。

最近では不眠外来として睡眠に関することを受け付けているところもありますが、そういったところもメインは一般内科でやっていることが多くありますので、不安があれば調べてみてください。

最後にお薬についてですが、アレルギーのお薬は眠気を起こす副作用があり、これを利用して作られたドリエルなど、様々なお薬が販売されています。

漢方薬でも不眠のお薬は多く、例えば寝つきが悪い場合は「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」、「女神散(にょしんさん)」、「抑肝散(よくかんさん)」、「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」といったものがあります。

また逆に寝付きは良くても途中で夜中に起きてしまうとか、予定の時間よりも早く目が覚めてしまう場合は「加味逍遥散(かみしょうようさん)」が適しています。

ストレス、精神的なことで眠りが難しい場合は「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」や「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」などがあります。

いずれのお薬、漢方薬も薬局で売っているため、興味があれば是非一度問い合わせてみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属