最近、薬局に3,4人ほど連続して「腱鞘炎」の患者さんが来られました。
特に連続した理由は分からず、たまたま偶然のようですが、腱鞘炎そのものについてvoicyで取り上げたことはなかったので、今回は腱鞘炎についてまとめて行きます。
「腱鞘」に起こる炎症
腱鞘炎とは、文字通り「腱鞘」と言う部分に起こる炎症のことです。
腱は、骨と筋肉をつなぐ部位のことを指し、腱を包んでいる刀の鞘のようなものが「腱鞘」です。
腱鞘が腱を支えることで、骨と筋肉がスムーズに動くようになります。
しかし、何らかの原因で腱鞘に炎症が起こると、その部位に腫れや痛みが起きます。
腱鞘炎は主に手首や指で起きやすく、例えば親指で腱鞘炎が起きれば、親指を曲げ伸ばしするたびに、親指から手首にかけて激痛が走ります。
手や指の使い過ぎに注意
腱鞘炎は手指を使い過ぎることで発症しやすく、例えばスマホを親指一つで長期間操作し続けたり、パソコン仕事が長期間続いたりすると起こることがあります。
またピアノやギターのような指が重要になる楽器や、ボールやグリップをしっかりと握り込むスポーツでも腱鞘炎のリスクが高まります。
さらには、更年期や妊娠中の女性の方も、腱鞘炎になりやすいとされており、これらの時期の女性は、女性ホルモンの分泌と腱鞘部分の炎症に関連があると言われています。
また、産後に赤ちゃんを抱っこする機会が増える方も、自然と手首に負担がかかって腱鞘炎のリスクが上がります。
手を休ませることが一番
腱鞘炎の治療は、やはり「手を休ませる」事が最大の治療になります。
使いすぎないこと、休息をとって、炎症をひかせていくのが一番ですが、スマホは日常的に必要であり、パソコン仕事が普段から多い方もたくさんいるはずです。
その場合は、基本的には痛み止めを使って治療していきます。
貼り薬や塗り薬はもちろん、飲み薬もあるため、症状に合わせて使って行きますが、それでもいわば「だましだまし」で治療している状態になると、症状が進んで行き、酷くなることがあります。
痛み止めで痛みは抑えられているものの、中で炎症自体は進んでしまいますので、やはり安静にすることは大切です。
痛み止めのお薬は市販のもので充分で、市販の塗り薬や湿布を使って痛みが引いて行けば問題ありません。
もしできるだけ早く治したいとか、慢性的になってしまって長期間痛みが引かないというときは、漢方薬を一緒に使うのもおすすめです。
治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)という漢方で腱鞘炎に限らず、打撲や捻挫というような、炎症を伴う痛み全般に効果がある痛み止めの漢方薬で、市販されているため簡単に手に入ります。
産後で子育て中の女性の方へは、体調がよく元気な時は、治打撲一方ではなく「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」と「五苓散(ごれいさん)」の二つが腱鞘炎に効きます。
もし疲れがひどく元気がない時、腱鞘炎の痛みと同時に冷えの症状がああるようなときは、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」と「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」の二つを一緒に飲むのがおすすめです。
どちらの組み合わせも、効果が出るのが早めですので、もし興味があれば是非試して見てください。
痛み止めの塗り薬や湿布、飲み薬、漢方薬など様々なものを試しても効果が出ず、2週間以上痛みが強いとか痛い範囲が広がってきているようなとき、腫れがひどくなってきたと言った場合は、整形外科のお医者さんに診てもらいましょう。
こまめにストレッチをして腱鞘炎予防
腱鞘炎の予防は、使い過ぎない事が一番ですが、完全にオフにするのは非常に難しいので、こまめにストレッチと休憩をとるようにしてください。
仕事の合間に少し手を止めるとか、例えば子育て中の方であれば、痛い時にはきちんと痛いと言って旦那さんやご家族に手伝ってもらったり、任せてきちんと休みを取るのも大切です。
可能であれば、痛みの初期段階、手首や指にわずかな違和感や些細な痛みを感じた時点で、処置をして食い止めるのが望ましいです。
わずかな痛みや腫れがあったり、動かしにくさは腱鞘炎のサインになります。
そういった症状が起きた時点で、なるべく動かさないようにして安静にするとか、氷水を当てて冷やす、湿布を使うと言った対処をすると、酷くならないで収まっていきますので、見逃さないように注意してください。