迷ってる人必聴!メディカルダイエットは楽に痩せる?#576

医療用医薬品によるダイエット

先日、自分の知り合いとの話の中で「SNSの広告で”メディカルダイエット”で薬を飲むだけで痩せる、注射を打って痩せる」というものを見た、という話題がありました。

そのSNSの広告については不明ですが、メディカルダイエットと言う用語は実際にあり、定義もあります。

年末年始のお休みに入り、健康や体重について気になる方も多いと思いますので、今回はこのメディカルダイエットについて詳しくお話ししていきたいと思います。

医学的に根拠がある方法を用いて体重を減らす

メディカルダイエットとは、医学的に根拠がある方法を用いてダイエットをするという意味です。

脂肪が燃える漢方薬を飲んで脂肪を燃やすとか、脂肪細胞を溶かす働きをするお薬を飲む、油分の吸収を抑える働きをするお薬を飲む、といったものです。

手術のような外科的なものもありますが、今回は先ほどの話題にもあったようなお薬にまつわるメディカルダイエットを中心に触れて行きます。

お薬で行うダイエットは、基本的には保険外で自由診療で行うことが大半ですが、市販のサプリメント等と比べると効果は充分高いと言えます。

例えば最近主なのが糖尿病のお薬を用いる方法で、保険が効かない上にお医者さんの指示のもとで服用していくため非常にコストがかかりますが、効果は確かにあります。

これは脱毛サロンで考えるとわかりやすいと思います。

美容整形外科などで行う医療用の脱毛機械は、効果が確かである代わりに費用が高く、エステサロンで行う脱毛は安価な代わりに効果が薄く何度も通う必要がある、と言うのが基本です。

メディカルダイエットもこれと同様で、高額ながらもお医者さんから処方されるお薬や処置を使えば、ダイエット効果が得られる、ということです。

尿から排出していくお薬

前述の、糖尿病のお薬を使ったメディカルダイエットは主に2種類あり、今回は尿から出していくお薬についてご紹介します。もう一つの方には長くなりますので、次回お話しします。是非次回も併せてご覧ください。

尿から排出していくお薬とは、尿に含まれる糖を増やす働きをするお薬です。

まず、赤血球や白血球は、腎臓にとってはかなり大型な成分となります。

それらは大きいため一旦血液に残し、血中の糖分やミネラルのような、そのほかの小さい成分を尿の方に置きます。

その際、腎臓から尿が溜まる膀胱に行くまでの管の中で、再度、体に必要な成分を回収するという仕組みがあります。

この仕組みを邪魔するお薬があります。

つまり、尿にある程度の糖質が含まれたまま排出していくようになる、ということです。

これは糖尿病の方には非常に効果が高く、糖尿病の方は文字通り、すでに尿の中に糖分がある状態ですので、そこからさらに前述の働きを邪魔して、糖分の排出を促す、ということをするため、高い効果が得られるのです。

血糖値が通常値であれば効果が薄く、副作用も多い

しかし逆に、それほど糖尿ではない正常な人の場合は、このお薬の効果はあまり大きくありません。

なぜかというと、尿から糖質を回収する部分が2か所あり、そのお薬は1か所しか邪魔しないためです。

正常な人であれば、2か所のうち1か所でも機能していれば、それで十分回収できる程度しかないため、血糖値が通常の数値の人であれば、飲んでも効果が薄いのです。

具体的に言うと、そのお薬では1日当たりおよそ150キロカロリー、35グラム程度の糖質が排出されるようになります。

そして1日のコスト、お薬代で言うと1日700円程度となります。

150キロカロリーは、およそおにぎり1個分程度ですので、このお薬を使うのとおにぎり1個分のカロリーを我慢するのとを比べると、コスパはそれほど良くないと言えます。

さらに、尿と一緒に糖質を出すということは尿の量が増えることに直結するため、トイレの頻度が非常に増えることになります。

当然同時に、水分もたくさん出て行くため、水分が不足しやすくなります。

脱水症状レベルまでになることはあまりありませんが、例えば乾燥肌になってくるとか、便が硬くなって便秘しやすくなるといったことは充分起こります。

また、糖が含まれている尿は細菌がより繁殖しやすい環境になるため、注意して清潔にしておかないと膀胱炎のリスクも高まります。

こうした副作用がある上に、前述のようにコストが高く、正常な人であれば尿に含まれる糖分はほぼ変わらないのです。

必要な人にお薬が届かない恐れも

そして、これは少し前の550回に通じることですが、ダイエット目的で糖尿病治療のお薬を使うということは、本当に糖尿病の治療のために必要な方に届かなくなる恐れも出てきます。

今では落ち着きましたが、実際に糖尿病の患者さんに届きづらくなったということが以前起きています。

保険外で高額な費用を掛けてまで、このお薬を使ってダイエットをする必要があるのか、考える部分は充分あると思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属