covid-19で注目!酸素の働きSpO2とECMO#564

Voicy更新しましたっ!

今回はあまり触れてこなかった「酸素」と「ECMO」についての詳しいお話

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「酸素」ってなに?

人間を含むほぼすべての生物は、酸素を吸って生活をしています。

ですが、この「酸素」という成分は、空気中にある成分で言うと2割ほどしかありません。 空気を構成する成分のうち、酸素は実は21%程度です。
78%が窒素、0.93%がアルゴンという成分、0.03%が二酸化炭素なのです。

これまでcovid-19関連で酸素やSpO2、ECMOといった言葉が出てきましたが、いずれもあまり詳しく触れておりませんでしたので、今回はこれにフォーカスを当てて行きます。

酸素の役割

まず初めに酸素の役割を簡単にまとめると、肺に入った酸素は血液に乗って全身の細胞へと行きわたります。

この時、細胞内に「ミトコンドリア」という場所があります。

ミトコンドリアというところで、タンパク質や脂肪、酸素といったものを一緒に活用して、エネルギーとして使います。

ざっくり一言で言うと、人間のエネルギーは体内のあらゆる細胞の中にある、ミトコンドリアという場所で作られている、と考えてください。

そして、この場に酸素という成分が無ければ、エネルギーを生み出すことができず、細胞の活動ができなくなる、ということでもあります。

ここでエネルギーを生み出す過程の中で、活性酸素というものが生まれます。

女性のお肌などでしばしば大敵と言われる活性酸素ですが、一概に悪いものではなく、免疫細胞と協力して細菌やウイルスをやっつける働きもあります。

しかし体内にある活性酸素が多くなりすぎると、体の正常な細胞を傷つけたり壊す原因になります。

それがいわゆる肌荒れや老化の原因とされる由来です。

ちなみに、体内に酸素がありすぎる状態、「酸素中毒」という言葉もあります。

これは酸素の濃度が50%を超えるほどの環境に居たり、酸素の圧力が通常の5倍ほどになるような場所、水深が40メートル以上の深さなどに行くと、酸素が大量に体に取り込まれてしまい、酸素中毒となることがあります。

筋肉のけいれん、吐き気、幻覚幻聴といった症状が出たり、肺の細胞にも深刻なダメージとなります。

基本的には普段の生活の中で酸素中毒になることはまずありませんが、酸素が多すぎるのも体にとっては悪影響なのです。

「SpO2」「サチュレーション」とは

これを踏まえて、今回のタイトルにある「SpO2」と「サチュレーション」ですが、簡単に言うと「現在の体内にどれだけの酸素があるか」を表す数字のことです。

最初に「肺に入った酸素は血液に乗って全身の細胞へと行きわたる」と書きましたが、これを具体的に言うと、赤血球の中にあるヘモグロビンが酸素と結びつき、細胞へと届きます。

この時、現在の体内にあるヘモグロビンのうち何パーセントが酸素と結びついているか、滞りなく酸素を運べているかを測ります。

その機械が「パルスオキシメーター」であり、パルスオキシメーターに表示される数字の単位が「SpO2」です。

測るのは非常に簡単で、機械を指に挟むだけで数字が出ます。

正常値は96%から99%で、9%を下回ると要注意、93%を下回るといわゆる「酸欠状態」になります。

軽い息苦しさや息切れ、頭痛や、集中力が続かないといった症状が出ます。

さらに90%を下回ると、自力での呼吸が完全に不十分になるため、人工呼吸器など外部からの酸素吸入が必要になる危険な状態になります。

ちなみに、パルスオキシメーターで体内の酸素量を測れるため、息切れや動機の原因が肺や呼吸器なのか、もしくは心臓の不調によるものなのかを確認するためにも用いることがあります。

使う際は正確に測る

そしてこのパルスオキシメーターは、正確に、きちんと使わないと大きく誤差が出る機械ですので、充分に注意してしっかりと使う必要があります。

言うまでもなく激しい運動の直後は息切れをして心拍数も高いため、正確な数字は出ません。

また、指先が冷えているときも血液の流れが悪い状態ですので、うまく反応が出ず誤差が大きくなります。

さらに、パルスオキシメーターは光を使って計測しているため、爪にマニキュアや付け爪をしていると光を妨害してしまい正確な数字が出せません。

必ず安静で、指先がきれいで温かい状態にして指を通して、およそ20秒から30秒ほどたった後の数字が今の自分のSpO2の数字となります。

酸素が充分に体に行き渡らないときに使う「人工呼吸器」

covid-19をはじめとしたウイルスなど、何らかの原因で肺の機能が落ち、酸素が充分にいきわたらなくなったとき、まずは濃度が高い酸素を自力で取り入れます。

濃度が高い酸素を口や鼻から入れ、酸素が行き渡ったら吐き捨てやすいようにします。

ですが、前述のように体内の酸素濃度が50%を超えると逆に悪影響ですので、濃度と同時に流速という酸素の速さを調節して送り込みますが、それでも限界があり、濃度の高い酸素を使っても不十分なほど肺の状態が悪くなることがあります。

そうしたときに使うのが「人工呼吸器」です。

気管支までチューブを入れ、チューブを通して直接肺に酸素を送り込みます。

これにより強制的に肺胞に酸素が入りますので、強制的に体内に酸素が行くのです。

ただ、強制的に動かすのは肺にダメージになるため長時間はできず、重症の場合はそもそも活動できる肺胞も少なく、人工呼吸器を使うことでさらに肺を酷使することになりかねません。

こうしたときに最終手段のように出てくるのが「ECMO(エクモ)」です。

心臓と肺の両方を機械に任せる

ECMOは人工心肺という言い方がされるように、文字通り心臓と肺の機能を併せ持った機械です。

まず体の一番大きい血管から、ポンプを使って血液をECMOの機械に流します。
そして酸素をその血液へ送り、その血液から二酸化炭素を取り除き、酸素の含んだきれいな血液にします。これを再度ポンプで体内に戻し、各部位へ行き渡らせます。

つまり、普段は心臓と肺が行う仕事を、ECMOが丸ごと行うのです。
ECMOを使うことでその人の心臓も肺も休ませることができ、大幅に回復しやすくなり、治療も進めていくことができます。

現在も、特に重症な場合ではこのECMOを用いて、治療がされています。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属