麻酔って怖くない?どんなものなの?#548

Voicy更新しましたっ!

今回は、医療で度々登場する「麻酔」の詳しいお話

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「麻酔」の仕組み

今回もcovid-19関連から少し変わって、麻酔に関するお話しです。

covid-19で重症化した場合、深刻な時には「ECMO」を使用します。

人工心肺と言い、装置を使って血液の交換をして、きれいな酸素を取り入れていくというものですが、これを使う場合には麻酔を用います。

これは厳密には、強めの鎮静剤を投与して意識レベルを落とすという仕組みですが、ECMOに限らず、手術などの場合には大半のケースで「麻酔」を使います。

麻酔についてはあまり触れていなかったので、今回は詳しく掘り下げていきたいと思います。

酒、薬草、催眠術が麻酔として用いられていた時代

まず「麻酔」とは、簡単に言うと何らかの方法で痛みなどの感覚を無くすもののことです。

薬の知識が乏しい時代には、お酒と薬草を使って麻酔薬としたり、それよりもさらに古い時代では催眠術を用いて痛みを消していた、ということもあるようです。

日本では華岡青洲という方が、飲み薬の全身麻酔薬を完成させ、実際に記録が残っています。

麻酔手術があったであろう形跡はいくつか化石からみられますが、日本のこのケースは記録が残っているという点で、世界で一番最初の麻酔手術と言われています。

近代で薬の技術が進んでいくにつれて、麻酔薬も進化していきますが、基本的にはアヘンなどの麻薬が主で、依存性などの危険な副作用があり、危険でしたが現在ではそこから改良されていき、現在に至ります。

麻酔の種類

現在主流なのが吸入による麻酔で、古いものだとクロロホルムというお薬が有名だと思います。

一昔前のドラマや映画で、ハンカチにクロロホルムをしみこませて、鼻と口を覆って塞いだらバタっと倒れて気絶させる、という演出があったと思います。

あれはあくまでも演出で、実際には最低でも6分ほど嗅がせ続けないと眠ることは無く、匂いも強いので、かなり非現実的です。

また副作用もあるため、現在ではクロロホルムが麻酔薬として使われることはありません。

次に有名で、特に歯医者さんでメジャーに使われているのが「局所麻酔」です。

注射や塗り薬を使って、その部分の感覚だけを麻痺させる、という仕組みです。

歯医者さん以外では、外科で小さめの傷を縫合するような場合にも使われます。

次にあまり聞きなじみがないかもしれませんが、「硬膜外麻酔」という種類があります。

硬膜外麻酔は、最近人気のある「無痛分娩」に最も多く使われています。

背骨にある脊椎を取り囲む、硬膜という膜があります。その部分の外側、つまり硬膜外に打つ麻酔のことを硬膜外麻酔と言います。

前項の局所麻酔は大きくても手のひらサイズの部分しか麻酔できませんが、硬膜外麻酔は首から足までの部分だけ、とか、おなかのあたりだけ麻酔する、逆に足だけ麻酔するといったことができます。

そして、脊椎の硬膜外ではなく、脊椎に直接打つ麻酔を脊椎麻酔と言います。

脊椎麻酔はみぞおちから下の下半身全体を麻痺できる麻酔で、硬膜外麻酔よりも広い範囲ができますが、長時間は効かないという特徴があり、およそ1時間から1時間半ぐらいで完了できる手術で使われることが主です。

長時間の手術の際には、全身麻酔が使われます。

こちらも有名だと思いますが、意識を完全になくして、全身の感覚を麻痺させる麻酔です。

全身麻酔が最も簡単ですが、その分体への負担が大きいため、必要に応じて脊椎麻酔や硬膜外麻酔、局所麻酔という風に使い分けていく必要があります。

麻酔って安全なの?

麻酔というと若干怖いイメージがあると思います。

安全なのかどうか、全身麻酔をかけたらきちんと起きれるのか、など色々心配があると思います。

確かに、全身麻酔はかかりすぎてしまうと呼吸が止まったり血圧が下がったりと、アクシデントが起きるケースもありますが、全身麻酔を使う際には必ず、麻酔の管理をする「麻酔科医」が一人つきます。

例えば、手術中に麻酔のお薬の量を見るのはもちろんですが、手術後に麻酔薬の投与を止めて、痛み止めの量を調節していって、無理なく徐々に目が覚めるように促す、ということも麻酔科医が行います。

ですので、現在では充分安全に、手術が行える環境にはなっています。

ただやはり、体への負担は大きいので、若干の副作用はあります。

例えば軽い頭痛や発熱、軽いしびれ、また全身麻酔の際に使った人工呼吸器の影響で、喉の痛みや渇きが起こることがありますが、これは大半の場合で体調とともに数日で治っていきます。

それよりも、医療者側からも注意が必要なのが、全身麻酔による「せん妄」の症状です。

いわゆる「ボケ」「痴呆」のような症状で、例えば幻覚を見たり言動が支離滅裂になってしまったり、不必要に興奮したりといった症状で、本人でもどう対処していいかわからないという症状が起きるケースがあります。

せん妄の症状も、しばらくしたら元に戻って落ち着きますが、手術直後は異常に興奮することがあり、これを知らないでいるとかなり怖いと思います。

できるだけ事前に意識して、心の準備をしてから手術、全身麻酔に臨むのがベストです。

全身麻酔は負担が大きいため、術後の調子を取り戻すのに若干大変な部分もありますが、現在では安全に行えるよう、万全の準備ができているので、万が一の際には安心していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属