ワクチン接種後の感染で重症化?抗体依存性感染増強とは#546

Voicy更新しましたっ!

今回はワクチン接種後に重症化するケースについてのお話

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「ADE」「抗体依存性感染増強」とは

現在、日本でcovid-19のワクチン接種を受けた方が人口の50%を超え、40代や30代以下の方の接種もようやく行き渡り始めています。

ワクチンパスポートや接種証明などの話も本格化されていますが、どうしても一定数は「打ちたくない」という方がいます。

それには様々な理由がありますが、最近話題で自分もよく見かけたのが「ADE」という問題です。

抗体が不完全にできてしまう?

ワクチンや抗体の仕組みについては、covid-19に関連してこれまでも度々触れておりますが、簡単におさらいするとワクチンを打ったり、一度ウイルスに感染することで、体の免疫システムは「抗体」を作ります。

そのウイルスへの抗体が体内にあることで、次に同じウイルスが入ってきたときにそのウイルスに抗体がくっつき、体内で増殖するのを抑え、やっつけて行くという仕組みです。

肺炎のウイルスとなるcovid-19でも同様で、ワクチンでウイルスの形をしたタンパク質を体内に入れて、covid-19への抗体を作るようにしますので、この仕組みでやっつけていきます。

しかし、この抗体が不完全にできてしまうとか、打つことで免疫のバランスが崩れる、というケースがあります。

こうなると抗体の意味がないどころか、余計に細胞にくっつきやすくなります。

つまり、抗体を持っていない状態、ワクチンを打っていない状態、感染したことがないという状態よりも、感染しやすく重症化しやすくなる、という事態が起こり得るのです。

これがADEです。

例えば自分の体、細胞がお城で、抗体や免疫システムがお城を守る兵士だとします。

感染する前やワクチンを打つ前であれば、兵士の力は弱いながらもお城はしっかりと閉じており、平和な状態と言えます。

ただし、この状態で凄く強い敵=ウイルスが大勢来てしまうと、たやすく突破されてしまい、大変な戦いとなります。

兵士が負けることでお城は陥落となり、発症する、重症化するという事態になります。

そこでワクチンによって新たな兵士を投入して、守りを固めようとしたところ、その兵士が突然裏切り、自分で防衛システムを開けたり壊したりして、敵が入りやすくしたのです。

結果的に、その兵士を入れる前よりも自らの戦力は落ち、負けやすくなる、ということなのです。

covid-19のワクチンではADEは、ほぼ起きない

このADEは、以前のSARSやデング熱のワクチンで、実際に起こったことがあります。

動物実験中に、その動物の免疫のシステムが異常をきたし、中止となったことが実際にあります。

ですが、現在接種されているcovid-19のワクチンでは、ADEが起こる可能性は限りなく低いです。

その根拠こそ、世界中で行った「実験」や「治験」です。

covid-19のワクチンではADEは起きないことが分かったうえで、実用化されているため、ADEについて心配することはありません。

これを打つことで、体の免疫バランスが変わる、不完全な抗体が生まれるということは、まずありません。

特に、現在は日本以外のアジア、欧米を含む世界各国で56億回分の接種が完了していますが、ADEの可能性が高い、特異な副反応は、どの国からも確認されていません。

ただ確かに、絶対起こらないとか、今後も絶対にない、とまでは言えません。

しかし、このADEは重大な副反応の一つですので、万が一起こった場合にはほぼ確実にその国で報告がされるはずですので、現状で一つもないということは、56億回分接種が完了しても起こっていないと考えられます。

これを踏まえて、自分にADEが起こるとしたら、それはいわば56億分の1の確率、と言える程の低い確率となりますので、まず心配する必要はありません。

それよりもワクチンを打たずに、感染するリスクの方が極めて高く、また重症化する可能性もありますので、やはり、打てるのであれば、打つことをお勧めします。

ワクチンを3回接種するとADEが起きやすい?

最後に、このADEはワクチンを3回接種すると起きやすい、という話題も少し目にしましたが、そもそも3回目の接種のデータがほとんどないため、現状では何とも言えません。

ただ、実際にファイザー社などは3回目の接種の治験をしており、開発時と同様に打った後の抗体や免疫システムの状態を事細かに調べているため、今後は何かしらの進展があるかもしれません。

他のウイルスのワクチンで考えてみると、例えばポリオのワクチンは5回接種することが推奨されていたり、インフルエンザのワクチンは毎年定期的に、自分も含めたくさんの人が実際に打っていますが、ADEはほぼ起きていません。

接種の回数が増えることでADEのリスクが高まる、ということは、個人的にはあまり言えないと思います。

現在は日本も含めた世界中で、3回目の接種についての議論が進められており、イスラエルでは実際に3回目の接種が始まっており、再び最速でイスラエルのデータが上がってくることが予想されています。

今後進展があれば、いち早くvoicyでお伝えしていきたいと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属