質問よりっ!殺虫剤や虫除けは人間に無害なの?#530

Voicy更新しましたっ!

今回は頂いたコメントから、今の時期活躍する殺虫剤、虫よけグッズに関するお話

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殺虫剤が人体に影響する?

夏を迎え、外遊びが増えたところで活躍するのが「虫よけスプレー」や「殺虫剤」といったグッズです。

商品によっては服の上からからではなく、皮膚に直接かけるようなものもあります。

人体への影響があるのか、虫への効果以外に何か影響が出るのかといったことも含めて、殺虫剤や虫よけグッズについてお伝えしていきたいと思います。

 

「除虫菊」という植物が主成分

現在市販されている一般的な殺虫剤、商品名で言うと「アースジェット」とか「キンチョール」といった製品の主成分となるのが「除虫菊」という植物です。

名前の通り虫を取り除く効果があり、人間には効きませんが虫に対しては非常に強い有毒性があります。

CMなどで、少し噴射されただけでコロッと倒れるような映像がありますが、まさにあれが再現できるレベルの毒性があります。

これを主成分として改良を続け、発売されているのがそれらの商品です。

分解して原液を飲むのは当然危険なことですが、スプレーの噴射が人間にかかったり、吸い込んでしまっても、人間の働きで簡単に分解でき、すぐ排出されますので、極めて安全性が高いのです。

ただ、ごくまれに、アレルギー反応が起こる場合があり、皮膚にかかることでその部分にかゆみや湿疹といった症状が起きたり、また慢性的に喘息の方は吸い込むことで喘息の発作が出る、といったことはあります。

喘息の発作の場合は殺虫剤の成分というよりも、細かいスプレーのによる飛沫を吸い込んだことが引き金で発作が起こる、ということですので、殺虫剤の成分は影響していません。

 

犬、猫といったペット類に対して強い毒性がある場合が

殺虫剤を使う上で注意が必要なのが、犬や猫といったペット類への影響です。

例えば一部のクモ用の家庭用殺虫剤では、猫や魚に強い毒性があります。

ですので、猫を飼っていたり、熱帯魚や金魚といった魚類を飼育している方で殺虫剤を購入する場合は、必ず裏面の注意書きを読んで、確認してから購入するのがベストです。

とはいえ、基本的には体表に触れるように噴射したり、水槽に液体が入らなければ問題ないケースが多いので、ペット類から遠く離れたところで使うようにすると安全です。

最後に殺虫剤に関して、例外的にですが、農薬レベルの薬品の殺虫剤とか、薬局でしか買えない「バポナ」といった商品があります。

殺虫剤の中でも特殊なもので毒薬にあたるもので、人間にも害があり、扱いが難しいタイプの殺虫剤と言えます。

販売に法規制がされ、使用に関しての規則が細かく決められており、使う理由、使い方といったことの聞き取りもあるものもあるため、気軽に購入できないようになっています。

一般的にドラッグストアやホームセンターで売られている家庭用の殺虫剤であれば、前項のような注意点を踏まえればいずれも安全性は高いですので、安心して使って頂いて大丈夫です。

 

虫を寄せ付けない「虫よけグッズ」

続いて、虫の「予防」ともいえる「虫よけ」の商品についてですが、有名なのだとサラテクトがあると思います。

サラテクトには、およそ50年以上前から使われている「ディート」というものが主成分になっています。

そしてそれほどまで長く使われている物質なのに、前述のような若干のアレルギー反応を除いては、健康被害が確認されていないという類まれな物質です。

ダニや蚊、ノミのような、人間の血を吸う虫は人間の体温や発する二酸化炭素といったものを感知して寄って来ます。

ディートは虫が持つこの機能を狂わす働きをするため、ディートが付着している人間は感知することができず、虫刺されの予防になる、虫よけ効果があるということです。

人間で例えると鼻が詰まってにおいや味が分からなくなるという感覚に似ています。

ディートは一時期、危険な物質と言われていた時期があり、10年以上前ですが平成17年に海外で動物の神経に悪い影響が出るという説が流れました。

この一報が出た直後、エビデンスはないものの念のためということで、お子さんへの使用制限を1日1回までという風にかけました。

そしてその3年後の平成20年、様々な動物を対象に実験した結果、神経への悪影響が出るということは確認されず、安全ということが分かりました。

ただ、日本では一度制限をかけたお薬に対して、その制限を解くことはほぼ100%無いため、現在でもこのディートのお子さんへの使用制限はかかっている状況にあります。

もう一つ、ディートと同じような効果で、イカリジンというものがあります。

最近出てきたもので、ディートと同じく虫を鼻づまりにさせるような仕組みで虫よけができる製品ですが、イカリジンは蚊やダニなど一部の虫にしか効かないという特徴があります。

ディートは蚊、ダニのほかにもノミやサシバエといった虫にも効果がある上に、イカリジンは新しい虫よけ成分ですので、健康への影響のデータもディートと比べると不十分だと個人的には思います。

どちらかというと、長い間使われていて、安全性が確実にあるディートの入った虫よけ製品の方が安心できるかと思います。

 

除虫菊エキスそのものを使った製品も

製品名で言うとアースジェットやキンチョール、虫よけのサラテクトなど、いずれも一般的に市販されているもので、通常通りに使うのであれば安全です。

ですが、化学物質はなるべく使いたくない、天然のもので殺虫や虫よけができないか、と思われる方もいるかもしれません。

殺虫剤に関しては、除虫菊を人の手によって改良したものではなく、除虫菊の天然のエキスそのものを使った殺虫剤もあります。

商品名で言うと「天然除虫菊キンチョール」とか「ムシズバジェットナチュラル」が挙げられます。

これらは除虫菊の花のエキスをそのまま製品化しているため、使用後の匂いも薬剤のような独特のにおいではなく、お花の匂いがするという特徴があります。

虫よけでは、アロマオイルだと化学物質が含まれていないことが多いです。

例えばレモングラスやハッカオイルは有名ですが、虫の嫌な臭いというのがあるため、こうしたものを活用すると化学物質を使わずに、殺虫や虫よけができますので、もし興味があれば調べてみてください。

 

 

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属