空間除菌は危険!換気を勧めるこれだけの理由#516

Voicy更新しましたっ!

今回は、今こそしっかりとお伝えしたい空間除菌についてのお話

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未だ根強い「空間除菌」の概念

先日、五輪期間中の感染対策の一環として、空気清浄機を活用するという旨がスポーツ庁から発表され、おとといにはAKB48の劇場の入り口で空間除菌を実施した、というニュースがネットで少し話題になりました。

空間除菌については、444回で詳しくお伝えしていますが、「その空間が丸ごと除菌される・きれいになる」という効果は一切示されていません。そしてこれはWHOでも、日本の厚労省でも、推奨していない方式になります。

医療用医薬品だとか、医療用機械のように公的に認められているものでは無く、一般雑貨レベルのもの、という事です。

このニュースもありましたので、ここで今一度、この空間除菌についてお伝えしていきたいと思います。

空間への消毒剤の噴霧は推奨されていない

まず、WHOの見解では、空間へ消毒剤を噴霧することは推奨されていません。

いかなる場合であっても、人体への直接空間噴霧、人が居る空間で消毒剤を噴霧するのは推奨していません。

もう一つ、アメリカの疾病予防管理センターとなるCDCでは空気や環境表面、物品の表面の除染方法としては不十分で、意味がほぼ無いというガイドラインを出しています。

日本でも前項のように、厚労省は公的には認めていない上に、以前444回の配信でも触れたように、各メーカーへ空間除菌について行政指導が入ったこともあります。

ですが、今回スポーツ庁が導入する旨を発表したのは、正直かなり問題なことだと思います。

空間除菌が危険な理由

空間除菌は意味が無いどころか、場合によっては人に悪影響がある、危険なことにもなり得ます。

444回にも重なりますが、空間除菌の効果が認められたのは、空気が循環せずにしっかりと密閉された空間でのことです。その中で、99%ウイルスが除菌できたという事は確かです。

ですが、日常生活の中でそういった空間を作る事はできず、万が一できたとしたら、その際にはウイルスではない悪影響が出る可能性の方が高いのです。

そんな空間を作っての実験データですので、日常生活においてはとても役に立たない、という事です。

さらにもう一つ、日本では実際に被害が確認されています。

38歳の成人男性が、空間除菌剤を長期間使用していたところ、呼吸困難を起こして酸素飽和度が70%まで下がって呼吸困難を起こしたケースがあります。

また誤飲事故ですが、据え置き型の空間除菌剤を、1歳の子供が誤飲してしまい呼吸困難に陥ったケースも確認されています。

444回でも触れていますが、例えば次亜塩素酸水は人体の中に入る事は想定されておらず、調理の場で扱う時は必ずきちんと洗い流すようにします。

そういったものを空間に噴霧して体内に入るようにするのは、はっきり言って危険、という事です。

換気の方がはるかに有効

何度も繰りかえしになりますが、空間のウイルスを取り除くのに一番効果的なのは「換気」です。

換気にはしっかりとしたエビデンスがあり、482回で詳しく触れていますので併せて参考にしてみてください。

シンガポールのある病院の感染隔離病室が1時間に12回、室内の空気が完全に入れ替わるというシステムになっており、室内に感染されている患者さんがいるにもかかわらず、室内でウイルスが発見されなかったという事が報告されています。

こうした事例は日本も含め世界中で上がっており、これが去年から言われている、換気で感染対策という根拠になります。

換気をきちんとできれば、空間除菌は不要という事です。

換気の方法については、417回で詳しくご紹介していますので、そちらも併せてご覧いただければと思います。

24時間換気システムのような、自動で換気できる仕組みがあれば問題ないですが、もし無い場合は、対角線になるように窓やドア、換気口を開けたり、換気扇を回してみてください。

換気扇はお風呂場やキッチンには必ずありますので、そこを回して、そして窓を開けるようにすると充分換気になります。

また構造的に、対角線にならない場合はサーキュレーターやエアコンを活用してください。その場合でも空気そのものを入れ替える必要がありますので、必ず窓を開けて、新しい空気を取り入れるようにしてください。

ちなみに、空気清浄機のフィルターを使って空気をきれいにする、という方法が使えそうですが、1時間あたりに空気清浄機を通る空気の量は極めて少なく、部屋の中の空気を全部空気清浄機に通すには非常に時間がかかり、感染対策としては全く不十分です。

必ず窓やドアを開けたり、換気扇を回して、空気を入れ替えるということをしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属