ニュースより!インフルエンザ脳症と異常行動って?#287

Voicy更新しましたっ!

今回は、ニュースで駅のホームから転落した人がいたのをみて、

インフルエンザ脳症についてお伝えしたいと思います。

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インフルエンザの薬で「異常行動」

インフルエンザの薬を飲むと異常行動を起こす、とたまに言われますが、それは薬ではなく「インフルエンザ脳症」というインフルエンザの症状の一つです。

1歳から5歳ぐらいのお子さん、未就学児に特に起こりやすく、軽いものであればそれほど珍しくありません。ただし、10%ほどの確率で、命にかかわる重度な脳症が起きることがあり、後遺症に残ることもあります。

インフルエンザ脳症は早く対処したら、後遺症や重症化を防げます。

サインを見逃さないよう、注意してください。

 

インフルエンザ脳症の症状

インフルエンザ脳症は、熱が出てから1日以内に起きることが多く、急激に悪化していくのが特徴です。

ぼーっとしているような感じで、様子がちょっとおかしいのが特徴ですが、例えば目の焦点が合わないとか、明らかに上の空みたいな感じであれば、インフルエンザ脳症の可能性が高いです。これが初期のサインとなります。

次いで、意味不明な言動、おかしな行動が起きます。

これは幻覚のようなものが見えているとか、言葉にならない声を出す、さらにはすやすやと普通に寝ていると思ったら突然起きて走り出す、ということも症状の一つです。

重症化すると、突然意識を失ってけいれんするとか、起きていたのに突然眠ってしまうなども起きます。

こうした症状は薬を飲むことでより出やすくなる、重症化すると言われていますが、これは因果関係はありません。なぜかというと、お薬を飲む前からこうした症状が出ることが多いためです。

 

軽症であれば、様子を見守っていれば大丈夫

インフルエンザ脳症の対策としては、まず少しぼーっとしている、上の空のような感じとか、突然走り回る、声にならない声を出す、幻覚みたいな症状であれば、いずれも軽症に入るので、一先ず様子を見てください。

こうした症状が起きても、すぐに正常に戻るとか、起きてたと思ったらまたすぐ寝たということがよくあるので、基本的には大丈夫です。

ただこれらが起きてから1時間ぐらいずっと変わらないのであれば危険です。

1時間ぐらいなんかが見えているような様子だとか、1時間ほぼ変わらずに何かを言ってる、おかしな動きをしている場合は、救急車を呼んでしまって良いです。長く続くと意識を失いかねないので、すぐに連絡してください。

 

けいれんが起きたら・意識を失ったらすぐに救急車を

そして「インフルエンザにかかっていて、1時間ぐらい見ていておかしなことを言い続けている・おかしな動きが止まらない、意識が無いみたい」という風にインフルエンザだという事を伝えてください。そしたら緊急度が伝わります。

けいれんの症状も同じく、救急車を呼んでください。

インフルエンザの時にけいれんを起こすのはいくつかの種類があり、インフルエンザ脳症によるけいれんと熱性けいれんというものがあり、熱性であればまだ大丈夫ですが、インフルエンザ脳症のけいれんは非常に重大な問題で、すばやい対処が必要になります。

この二つは見分けが非常につきにくいので、けいれんが起きたらすぐ救急車で良いです。

意識を失った場合も救急車ですが、これは普通に寝ている状態、休んでいるのと見分けが付かないというのが問題です。

判断のポイントは、やはり呼び掛けたりゆすったりして、目を覚ますかどうか、に尽きます。

例えばちょっと話しかけてみたり、ゆすったときに目が少し開くぐらいですぐ閉じてしまうとか、どんな返事もない場合は意識障害の可能性がありますので救急車を呼んでください。

ただ寝ぼけているだけで、それほど重くなく軽い状態なのではと思われそうですが、重症なインフルエンザ脳症が隠れている可能性があるので、救急車で良いです。違ったとしてもそれはそれで良かったということで問題ないです。

 

2日はそばにいて目を離さないように

インフルエンザ脳症は万が一起きてしまうと、時間との勝負が非常に大きいので、注意深く様子を見てください。

また、異常行動だけで言えば、言ってしまえば突発的なことで、重症には入らないです。インフルエンザが治ることで自然と治ります。

2日ぐらいはそばにいて、目を離さないで様子をみてください。そして、突然道路に飛び出すとか外に飛び降るなどを防いでください。

こうした突然飛び出すなどの異常行動は小中学生の男子に多いので、お子さんがいる方インフルエンザにかかった方は、出来るだけ2日は一緒にいて、予防してください。

 

インフルエンザ脳症の予防は無い

インフルエンザ脳症の予防はありません。

インフルエンザを予防して、感染、発症させないことが、インフルエンザ脳症の予防になります。

これまでも何度かお伝えしているように、風邪、インフルエンザの予防をしていってください。例えばワクチンを打つ、保湿をしっかりとする、手洗いを徹底するなどです。

脳症が起きても一時的なものではありますが、重症化してしまうと後遺症になるので、注意深く様子を見続けて、場合によっては救急車を呼ぶ、という事もしてください。

 

インフルエンザの時には、市販の解熱剤は飲まない

最後に、一番注意が必要なのが、市販の解熱剤です。

インフルエンザの時にタミフルなどと同時に解熱剤をもらうことがあると思いますが、それはできるだけ使わないように、どうしてもつらい時だけ使ってください、という風に渡されると思います。

これはなぜかというと、インフルエンザ脳症は急激に症状が悪化するので、解熱剤を使うことで表面に出る症状を抑え、隠すようにしてしまうためです。

最初に書いたように、初期症状は頭がぼーっとしているとか、上の空っぽい感覚で、それから異常行動、けいれんという風に重度になっていきます。

ですが、解熱剤を飲んでしまうと初期の症状が無い状態で進んでいき、突然けいれんしたり意識を失うことになるので、症状に気付いて救急車を呼んだ時にはかなり進行している、という事が起こり得ます。

なので、市販の解熱剤はほんど使わないでください。

市販のものだと、商品名でタイレノールと言うのだけは使っても良いです。

病院で処方されるものはカロナールとかアセトアミノフェンなどありますが、市販のものではタイレノールだけ使ってください。

 

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属