梅雨時期はウィルス性肝炎に注意?予防と対策は?#814

梅雨でウイルス性肝炎のリスクが上がる

今年も7月に入り、例年だと梅雨に入っている時期ですが、いくつかの地域では既に梅雨明けしており、例年よりも梅雨が短いと言われているようです。

梅雨というと、以前は梅雨だるや天気痛などを取り上げてきたかと思いますが、実はウイルス性肝炎のリスクが高まる時期でもあります。

一見関係無さそうですが、実は湿度が高い時期だとリスクが上がるという特徴があります。

今回はこの肝炎について、少しまとめて行きたいと思います。

肝臓に炎症が起こる

肝炎とは、文字通り肝臓に起こる炎症のことです。

そして、ウイルス性肝炎はウイルスに感染することで起こる肝炎のことです。

現在日本で確認されている、肝炎を引き起こすウイルスは、A型、B型、C型が有名ですが、D型とE型も存在します。

厳密に言うと特徴に違いがありますが、おおまかにはいずれも同じような症状で、発熱や食欲不振、黄疸と言った症状が出ます。

そしてこの中で、梅雨に最もリスクが上がるのがA型肝炎です。

A型肝炎のウイルスが付着した食べ物や水分を摂ることで感染しますが、湿度が高まることでウイルスが食べ物の中で繁殖しやすくなります。

いわば食中毒のように、食べ物から感染するウイルスですので、気温も湿度も高い7月ごろ、梅雨の時期に感染のリスクが上がるのです。

ちなみにその他で言うと、B型肝炎は血液や体液を通じて感染することが大半で、医療ミスや性行為で感染するリスクがあります。

C型肝炎は血液を通じて感染するため、性行為で感染することはまずありませんが、医療ミスによるものや、一昔前では輸血でも感染することがありました。

D型肝炎は、B型肝炎に感染した人だけに感染、発症する可能性があるもので、症状はB型肝炎からさらに悪化したように起こるのが特徴です。

E型肝炎はA型と同じく、食べ物や水分から感染するウイルスで、特に妊娠中の妊婦さんには症状が重くなり、危険とされています。

D型とE型は日本での事例は稀ですが、感染のリスクがあるB型もC型は、一度感染すると肝炎が慢性的に起こる危険があり、特にC型肝炎は慢性化しやすいという特徴があります。

慢性的に肝炎が起こるようになってしまうと、肝臓には重いダメージとなり、肝硬変や肝がんのリスクが大幅に高まります。

症状の進行度合いで治療法が変わる

ウイルス性肝炎の治療は、ウイルスの種類によっても変わりますが、進行度合いによって治療法を変えていくことが基本です。

まずA型の場合は抗ウイルス薬が無いため、対症療法をして免疫力によって治療、回復させていくことが基本になります。

初期症状であれば、水分やたんぱく質をとって、しっかりと休むことから始めます。

B型の場合は、急性症状が起きたら一旦休んで様子を見ますが、落ち着いた後にはインターフェロンという抗ウイルス薬があるので治療していきます。

C型も同様ですが、C型は急性期が無く、感染した初期段階では症状が少ないため、気付かないということがあります。

ですのでいつの間にか症状が進んでいたり、C型肝炎が慢性化しているということがありますが、これも肝炎用の抗ウイルス薬を使います。

D型は前述のインターフェロンというお薬のD型用がありますのでそれを使います。

E型はお薬が無いため、対症療法になります。万が一妊婦さんが感染した場合は、重症化する危険があるため、大事をとって入院して回復を待つこともあります。

肝炎ワクチンの接種を

B型とC型においては、感染しているかどうかの検査が可能で、例えばB型は健康診断などでの血液検査で判断が出来ます。

またA型とE型に関しては、一過性の症状と言い、基本的には一度かかると二回目にかかることは無いタイプのウイルスになります。

そして、A型とB型のみ、ワクチンが存在しており、予防効果がかなり高いことが分かっています。

B型肝炎のワクチンは、医療現場のような血液に触れる機会の多い職業の方は、接種している方も多いですが、A型のワクチンは接種していない人も多い印象です。

A型の肝炎は海外で感染するケースが多いため、海外に行く用事が多いという方は接種するのがおすすめです。

ワクチン以外だと、前述のように湿度によってウイルスが繁殖するため、食べ物はしっかりと火を通してすぐに食べるとか、水分も開封したらすぐに飲み切る、手洗いをしっかりと行うなども対策になります。

また、血液や体液からも感染することがあるため、性行為の際には避妊をきちんとすることも予防の一つになります。

C型においては急性期の症状が無いため、知らず知らずのうちに進行することがあるため、定期的に肝機能の検査をするのもおすすめです。

肝炎を早期発見、治療することが、最終的には肝硬変や肝臓がんと言った重大な病を防ぐことにつながりますので、注意して頂ければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属