他国はcovid-19衰えず!第6波はどうなる?#563

Voicy更新しましたっ!

今回は最近の欧州で活発になってきたcovid-19、そして今後予想される「第6波」に関するお話

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欧州で再び活発になってきたcovid-19

今回はかなり久々に、covid-19についてです。

現在日本の感染状況は、東京で数十人レベルとかなり低い水準を維持しています。

しかし、いわゆる下げ止まり状態で、今後は緩やかに上昇してくる可能性も否めません。

そして現在、欧州など海外諸国では逆に感染の勢いが増しています。

ワクチンの「怪我の功名」説が

日本では現在、ワクチンを2回接種した人が7割を超え、年内残り1か月半ほどで8割に到達する可能性が出ています。

感染者数のピークは8月26日で、その後急激に減少に転じましたが、減少に転じた大きな原因の一つに、ワクチンがあるとされてれます。

発症予防、重症化予防の効果はもちろんありますが、日本ではワクチンの普及が他国に比べてスローだったという点があります。

承認申請や自治体への配布、接種券の手続き等に手間がかかり、最優先となっていた高齢者への接種も5月ほどからスタートと、かなり時間がかかりました。

そして7月8月から一般向けの接種が始まり、9月、10月と全国に普及して現在へと至ります。

この普及の遅さが逆に、良い方に作用した可能性があるのです。

ファイザー社もモデルナ社も、ワクチンの効果は4か月で徐々に減少してくるとされています。

他の国はワクチンの普及が日本よりもある程度早く、実際に日本よりも早い段階で感染者数が減ってきて、ワクチンの効果が出始めていました。

しかし、普及しておよそ3か月か4か月経過してから、出てきたのが変異株の「デルタ株」です。

従来のアルファ株からデルタ株に代わり始めたタイミングと、ワクチンの効果がわずかに落ち始めたタイミングとが重なったことで、接種が世界で最も早いイスラエルでも感染者数が増えたという見方があります。

日本ではデルタ株の感染が広がるのと同時に、一般層へのワクチン接種が加速していきました。

もし、もう少し接種のタイミングが早ければ8月26日のピークの数字は、これよりさらに大きくなっていた可能性があるということです。

ただし、この事はあくまでも見方の一つで、エビデンスはありません。

以前から触れているように、マスク文化など基本的な感染対策が欧米諸国と日本とでは大きく違うのも、充分一因と考えられます。

欧米諸国ではマスクをつける文化は以前からほとんどありません。

日本では逆に以前からマスクをつける文化がある上に、covid-19によってマスクが無いとお店に入れないとか、イベントに参加できないといった対策もあります。

個々人の努力ではなく、集団でマスクをしていることが感染予防効果として表れている、と言えるのです。

コピーミスによる「自滅」説

もう一つ、最近発表されたのがコピーミスでデルタ株が「自滅」したという説です。

コピーミスについては、以前変異についてまとめた441回の配信でお伝えしておりますので、そちらも参照していただければと思います。

簡単に言うと、ウイルスは人の体内で細胞を使って増殖していきますが、一定の割合でそれの完全なコピーではないものが生まれます。

不完全なウイルスですので、基本的には体の免疫でやっつけられ、淘汰されますが、ごくまれに逆に強毒化することがあります。

例えばインフルエンザの変異型となる新型インフルエンザや、このcovid-19のデルタ株が主な例です。

この説は日本の国立遺伝学研究所と新潟大学による分析で、通常はコピーミスがあった際、そこから修正して形を整えようとする働きもウイルスは持っています。

その逆に、人間には免疫システムがありますので、その修正を邪魔してやっつけようとします。

その結果、コピーミスのウイルスがさらにコピーミスを起こし、元のウイルスの形が無くなり、淘汰されます。

これがデルタ株で起き、デルタ株のコピーミスが繰り返されて自滅していった、という説です。

そしてこのコピーミスの修正の邪魔をする働きを持つ人間が、日本を含むアジア、オセアニア圏に特に多い、という説が発表されたのです。

ただし、もし本当にこれがあるとしたら、他のアジアやオセアニアの国でも同じぐらい感染状況が収まってなければならないはずです。

実際には韓国など広がっている国もあるため、一概にこれが最大の原因とは言いにくいと思います。

3回目のワクチン接種はどうする?

最後に、現在の日本のcovid-19で本格的に検討されているのが、3回目のワクチン接種です。

政府は3回目分も全国民分購入していると発表しており、3回目接種開始も現実味を帯びていますが、個人的には重症化リスクが高い方や、感染時のリスクが高い方は打った方が良いと思います。

例えば高齢者はもとより、医療従事者などでできる限り感染のリスクを減らしたい、という方であれば充分打って良いと思います。

前述のように、接種から4か月ほどで発症予防効果は徐々に落ちてくることが明らかになっている上に、今年はこれから冬、春と寒い季節を迎えるため、換気がおろそかになりやすいと思います。

さらに、すでに3回目の接種も進んでいるイスラエルでは、ほとんどの人口が2回目の接種を終えた4月末では感染者数が100人を切りましたが、6月末ほどから感染が再び拡大に転じ、9月上旬には1万人を超えました。

これがデルタ株の拡大で、これを抑えるべく3回目の接種を積極的にスタートしたところ、この1か月から2ヵ月ほどで、1000人弱ほどまで落ち着いています。

3回目の接種も可能であれば、その分感染は収まっていく可能性は高いと言えます。

重症化予防効果は4か月以上継続

また、4か月で効果が減少するのは、あくまでも発症予防効果です。

つまり4か月経過で、軽症で発症するリスクがわずかに高まるというだけで、重症リスクは4か月以上、9割抑えられたままです。

その上で、軽症者向けへの治療手段、お薬も日増しに充実してきています。

例えば抗体カクテル療法はすでに実用化済みで、医療体制も整いつつあります。

そして現在、海外では飲み薬も承認され、併せて日本での承認、実用化も検討されていますが、おそらく最短でも半年ほどはかかると予想されています。

これを踏まえると、やはり軽症であっても発症のリスクを抑えた方が良い高齢者の方、感染のリスクをできる限り減らした方が良い医療従事者の方は、打った方が良いかと思われます。

この一方で見方を変えれば、3回目の接種は普通の方であれば打たなくても良い、と思われそうですが、ここが難しいポイントとなります。

現在7割強ほどの方が2回目の接種を終えているため、今後感染者数が増えたとしても、軽症者が多く、重症者は少ない状態、となる可能性が高いです。

ですがこれはあくまでも予想ですので、今後の感染状況がどれだけ悪くなるかは、不透明です。

来月12月、そして1月、2月と、8月のピークを超えるほど感染者数が急激に増え、重症者も緩やかとはいえ増えてしまえば、医療はひっ迫しますので、3回目の接種を加速させるという方向にシフトするかもしれません。

逆に感染者数が増加しても重症者数がそれほど増えず、医療資源が守られているのであれば、3回目の接種を加速させずとも、抗体カクテル療法で素早く治療できるように体制を充実させる、という方針が取れると思います。

いずれにしても、現在はこれまでよりも人流が多く、感染リスクは依然として高い状態ですので、引き続きこれからも感染対策を続けて行きましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属