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今回は日本国内での使用が始まりそうな、アストラゼネカ社製のワクチンの最新情報と詳しいお話
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アストラゼネカのワクチンが解禁に
ワクチン接種が本格化され、64歳以下への一般層への接種が喫緊の課題となっている現在ですが、ついにアストラゼネカ社製のワクチンの使用が本格的に検討され始めました。
以前も何度か触れていますが、アストラゼネカのワクチンは血栓の副反応の問題があり、国内での承認に時間がかかっていました。
しかし現状では、職域接種、大規模接種で用いられる、ファイザー社とモデルナ社のワクチンの量が少なく、接種スピードが滞ってきています。
そこで段階的に、アストラゼネカのワクチンを使用する動きが出始めました。
今回はこのアストラゼネカのワクチンについて、最新情報も踏まえながら、今一度おさらいしていきます。
ウイルスベクターワクチン
アストラゼネカのワクチンは、仕組みで言うとウイルスベクターワクチン、というものになります。
体に対して特に影響のない、無害なウイルスの中に、covid-19の一部のみを作る、設計図を入れます。これを体内に注射します。
すると、無害ではあるものの、ウイルスが体内に入り込むことになりますので、人の細胞内で増えていきます。
つまり、covid-19の一部を持つ細胞が、体内に増えていくのです。この細胞のことを、スパイクタンパクという風に呼びます。
そこでこれを壊すべく、体の免疫システムが働きます。これで、この形のウイルスへの抗体が体内にできます。
ですので、今後もし万が一、本物のcovid-19が体内に入り込んだとしても、体内で増殖する前に免疫細胞が働き、やっつけることができるため、感染しなくなるとか、感染しても重症化を防ぐということができるのです。
ただし、無害とはいえウイルスそのものを打つ形になるため、このウイルスに対しての抗体も体内で作られます。
すると2回目の接種の際に、体内でスパイクタンパクの細胞が増える前にウイルスが破壊されてしまうことがあり、効果が出にくいという一面もあるのが、このウイルスベクターワクチンの特徴です。
一方のファイザー社やモデルナ社はメッセンジャーRNAワクチンというタイプで、これはウイルスではなく、油の膜にcovid-19の設計部の一部、スパイクタンパクをつつんで、細胞に届けるという仕組みです。
打ったそばから免疫細胞に攻撃されることは無いため、2回目の接種でより高い効果が得られる、ということになります。
安全性が高く、扱いやすい
アストラゼネカのワクチンの、ウイルスベクターワクチンの大きなメリットが、安全性の高さと扱いやすさにあります。
ウイルスベクターワクチンは古くからあるインフルエンザワクチンなどで使われている仕組みのワクチンで、安全性が極めて高いのが特徴です。
ファイザー社、モデルナ社のメッセンジャーRNAワクチンは開発自体は数十年前から行われており、治験も同様にお行われていますが、実用されているという点では、ウイルスベクターワクチンには及びません。
インフルエンザもcovid-19も、ウイルスという点では同じですので、ウイルスベクターワクチンを打つことで予想される副反応もしっかりと共有できています。
もう一つ、扱いやすさでもメッセンジャーRNAワクチンとの大きな違いがあります。
ファイザー社、モデルナ社のワクチンの大きな問題として、超低温の冷凍庫が必要という点がありました。
普通の冷凍庫ですら移送に不向きで、ディープフリーザーという特殊な冷凍庫を用意しなければなりませんでしたがが、ウイルスベクターワクチンは2℃から8℃という、通常の冷蔵庫で問題なく保管ができるのです。
さらに、このウイルスベクターワクチンは、前述のように歴史があって安全性が高く、日本国内での製造実績もあるため、このアストラゼネカ社製のcovid-19のワクチンは製造承認がとられており、今後日本国内での生産が可能という点もあります。
ファイザー社、モデルナ社のワクチンは今後も契約、購入、輸入といったステップを踏む必要がありますが、アストラゼネカのワクチンは日本国内で生産、流通するということが、極めてスムーズにできるのです。
血栓以外のデメリット
反対にアストラゼネカのワクチンのデメリットとしては、以前から言われているように血栓の問題と、効果が他社と比べると低い、という点があります。
ファイザー社、モデルナ社のワクチンは従来型のcovid-19に対してはおよそ95%予防、デルタ株へは88%予防の効果がありますが、このアストラゼネカのワクチンは従来型では76%、デルタ株へは67%の予防効果があることが分かっています。
ファイザー社モデルナ社のワクチンと、感染予防効果だけを比べると、明らかに効果が低いことは確かなのです。
ただし、入院予防効果、重症化予防という観点では、両社に全く負けておらず、従来型で86%、デルタ株へは92%の効果が確認されているため、重症化予防としては十分機能しています。
ちなみに実験段階ですが、例えば1回目の接種をアストラゼネカ、2回目の接種をファイザーやモデルナ、あるいはその逆という風にすると、感染予防と重症化予防の両方が高いレベルで得られる、という可能性も残されています。
接種に年齢制限を設ける
そして今回でも度々出てくる「血栓」の問題ですが、原因は不明ですがアストラゼネカのワクチンによって血栓ができ、それによって亡くなるという方が海外で、およそ10万人に一人の割合で起きていました。
副反応としてはかなり大きいため、現在まで承認されていないという背景があります。
しかし、海外ではやむを得ず使用している国もあり、血栓の副反応のデータが徐々に集まってきているというのも事実です。
傾向としては若い女性の方に多く見られることがわかり、そして起きるのは1回目の接種の1か月以内に多い、ということです。
症状はふくらはぎの痛みやしびれ、むくみ、胸の痛みや不自然な息切れなど、心臓や血管に関するものが多いです。重度だと、激しい頭痛やめまい、ろれつが回らなくなるといった脳梗塞の症状も報告されています。
日本では若い女性の方を避けて、接種が開始される予定ですが、これは実は海外でも似たような制限がされている現状があります。
例えばカナダでは30代以上で早いうちの接種を希望する方のみアストラゼネカ社製のを、と定めていたり、フランスでは55歳以上の方のみアストラゼネカ社製のワクチン接種可としています。
ただ、オーストラリアやインド、台湾では制限がなく接種されています。
感染予防効果としてはファイザー社、モデルナ社には若干劣りますが、デルタ株の拡大で医療がひっ迫している現在、高い重症化予防や入院予防効果があるアストラゼネカのワクチンを、限定的にでも活用していく、ということです。