質問より!薬は治療しない?どういうことなの?#499

Voicy更新しましたっ!

今回は頂いた質問から、「お薬」と「治療」のお話

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「薬の役割」とは

今回は久々に、お薬そのものに関するお話です。

コメントで、「薬は症状が出てから服用するものが多い気がする」「予防のために服用する薬は?」と言った内容のものを頂きました。

今回はこのコメントを基に、薬の役割について今一度ご紹介していきたいと思います。

まず一番最初に前提として、今回出てくる「お薬」は「西洋医学のお薬」という事を留意してください。

これは西洋薬と言い、対義語となるのが東洋医学の「漢方薬」等になります。

西洋医学と東洋医学では、病気そのものの捉え方、概念が全く変わってくるため、ここでは全て割愛します。

 

症状を止めるのが西洋薬

まず市販されているお薬、処方されているお薬にどちらも共通しているのが、その大半が「症状を止める」という働きをする点です。咳止め、鼻水止め、炎症を抑える、などなど様々なあると思います。

これは言い換えれば、直接、お薬が菌やウイルスを攻撃することは、ほぼありません。

しかし、その結果として間接的に病気を治すことになるのがお薬です。

例えば、胃酸を止めるお薬を使うと胃潰瘍が治ります。

胃潰瘍とは、胃酸が何らかの影響で出すぎることで胃の壁が荒れてしまう病ですが、お薬を飲むことによって、胃酸が出すぎるという症状を止めることで、胃潰瘍がきれいに治って行きます。

ほとんどの薬はこのように、症状を止めることが主な働きです。

病気を治すのはお薬ではなく、体が持っている免疫力、治癒力を高めて、治して行くという事です。

 

体の働きを助ける薬

直接病に関わるものでは無いですが、より近い役割があるのが、体の働きを助けるというタイプのお薬です。

例えば喘息、気管支炎のお薬で、炎症を抑えるのではなく、空気の通り道を広げるという事が出来るお薬があります。

また、しばらく前の配信で触れましたが、ナチュラルキラー細胞を活性化させる、というお薬が現在開発中です。

ナチュラルキラー細胞とは、元々人間の体内にある免疫細胞の一つで、体の中にあるがん細胞を殺すという働きがあります。この細胞の働きをお薬で活性化させ、働きを促すというものです。

 

原因そのものを治療するのは「抗菌薬」

病の原因そのものを治療する、一番代表的なお薬が「抗菌薬」とか「抗ウイルス薬」です。文字通り、菌やウイルスそのものに働くというお薬になります。

ただ基本的には一種類のお薬で全ての菌、全てのウイルスに対応出来るわけではありませんから、種類が違うと全く効きません。

また、腸内にある善玉菌と悪玉菌のように、様々な種類の菌が体内にあるため、誤って菌を不必要に殺してしまい、逆に副作用が出る場合もあります。

少し前の古い抗がん剤などでは、がん細胞だけではなく健康な他の細胞も殺してしまい、副作用が出るという事がありました。

そうしたことを防ぐためにも、前項のナチュラルキラー細胞のような、免疫細胞の働きを促すことで、がん細胞を殺すというお薬が開発されています。

 

ワクチンと生活習慣病のお薬は「予防薬」

そしてコメントにあった予防のお薬、予防薬ですが、これは直接的に病の予防になると言うお薬は、正直言うとほとんどありません。

ただ、やはり「ワクチン」は近いと思います。

あらかじめ打って体内に入れておくことで、ウイルスに感染しても重症化しない、それどころか症状が出なくなる、感染しないという働きが得られるため、予防薬の一つと言えます。

そしてもう一つ、「予防薬」と言うと自分の中でしっくり来ていますが、おそらく一般的にはあまりしっくりこないと思われるのが「生活習慣病のお薬は自分の感覚で言うと予防薬だと思います。

例えば糖尿病の人だと血糖値を下げる薬を飲むとか、血圧が高い人は血圧に効く薬、血液がドロドロの場合はサラサラにする薬を飲むと思います。

薬を飲んで、そういった症状を抑えるという事は、間接的に、人工透析や心筋梗塞、脳梗塞と言った重大な病を防いでいることに繋がります。

こう考えると、生活習慣病のお薬は充分予防薬の一つと言って良いと思います。

 

 

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属