睡眠薬を飲んでも眠れない!寝ようと頑張るのをやめる。CBT-Iと言う治療#1025

睡眠薬を使っても眠れないという相談が

先日から度々、TikTokライブで話題になったことを取り上げておりますが、実は体感で最も多い質問と思われるのが、睡眠薬を飲んでいるのに眠れない、というものです。

一見すると矛盾しているように感じるかもしれませんが、簡単に言えば睡眠薬が効かない、という場合についてです。

睡眠薬を飲んでも眠れず、お薬を2種類、3種類と飲んでもなかなか眠れずにどんどん薬が増えていく、というケースもあります。

これに関連して、今年の6月より保険適用された、CBT-Iという睡眠に関する治療法について、詳しくご紹介していきたいと思います。

睡眠薬が効かないときの対処法

まずはじめに睡眠薬についてですが、当然ながら睡眠薬もさまざまな種類があり、相性や個人に合わせた調整が必要な場合もあるうえに、慢性的な不眠はお薬だけで解決できるものでもありません。

例えば、眠れない状態が長く続くと、いつの間にか眠れないこと自体が眠れない原因になることもあります。

今日は絶対に7時間くらい寝ないと明日がもたない、というとき、いつもより早く布団に入ったものの眠くならずに1時間経過してしまい、もう6時間しか眠れないとか、あと5時間しかない、という風に焦った経験がある方もいるはずです。

さらに翌日には、昨日眠れなかったから、今日はもっと早く寝ようと考え、さらに早い時間からベッドに入るようになり、同じように繰り返すこともあります。

こうなると、ベッドやお布団の中で眠れずに起きている時間がどんどん長くなります。

本来は眠る場所でも、いつの間にか体が、ここに入るとまた眠れないかもしれない、と緊張する場所として学習されてしまい、悪循環に陥ります。

このような考え方や行動の悪循環を変えていく治療をCBT-Iと言い、日本語で説明すると、不眠症の認知行動療法となります。

簡単に言いうと、眠れなくなってから身についた行動や考え方を見直し、眠れる仕組みを作り直していく治療なのです。

眠る場所を再認識する

CBT-Iは、眠れなくなってしまってから身についた行動や考え方、心理を作り直す治療ですので、枕を変えるとかサプリメントを飲む、カフェインを控える、寝る前のスマホなどを減らす、といった従来の睡眠環境の改善だけを行うというものではありません。

これらの生活習慣の見直しは睡眠衛生と呼ばれており、それらの見直しももちろん重要ですが、それだけでは慢性的な不眠は解決できないため、根本から、直接的に変えていく治療が必要になります。

CBT-Iで代表的な方法の一つが、刺激統制法です。

ベッドやお布団を眠る場所として、もう一度脳に結びつけることをします。

例えば、まだ眠気が来ておらず、眠くないのに、12時を過ぎたから寝なければ、と無理に寝ようとしていた場合はそれを止めて、眠気が出てから眠る場所に行きます。

また、一度ベッドやお布団に入っても眠れずに、目が覚めている状態が続くのであれば、一度出て眠気が来てからもう一度戻ります。

つまり、眠る場所で眠らずにスマートフォンを見たり、仕事をしたり、長時間考え事をしたりする時間をできるだけ減らすことをして、場所を再認識することから始めます。

時間調整と睡眠への考え方の見直し

もう一つの方法が、睡眠時間の調整です。

最初から眠るのに時間がかかるから、などと思ってしまい、あえて早くその場所に行ったり、休むために長時間横になったりすることがありますが、そうではなく、実際に眠れている時間だけ、その場所に居るように時間を調整します。

例えば8時間眠る場所にいても、実際に眠れているのが5時間であれば、3時間はその場で眠れないまま過ごしていることになります。

これを止めて、眠る場所にいる時間を実際の睡眠時間に出来る限り近づけ、そこにいるときは完全に眠っている、という関係を体に学習させていくのです。

これは睡眠制限法とか睡眠スケジュール法と呼ばれることもあります。

ただし実際のCBT-Iの治療では、睡眠日誌などを使って睡眠時間や睡眠の状態を出来るだけ記録して確認しながら、専門家と一緒に調整していく方法ですので、自己流で行うのはおすすめできません。

そしてもう一つの方法が、考え方の癖を見直すことです。

前項に通じますが、1日8時間寝ないと翌日に耐えられないとか、今夜眠れなかったら明日は絶対に仕事ができない、お薬がないと一生眠れない、といった考えが強くなっているケースがあります。

眠らなければいけないという思いが強くなるほど、眠れないことへの緊張感も強くなりますが、実は人間の必要な睡眠時間には個人差があり、一晩眠れなかったからといって、翌日に必ず何もできなくなるというわけではありません。

CBT-Iでは、本当に必要な睡眠時間なのか、などといったことを自分の睡眠記録などを使ってお医者さんとともに考え、睡眠に対する思い込みを少しずつ修正していきます。

これは単なるメンタルトレーニングや根性論のものではなく、自分の現在の睡眠を正確に記録して、行動を変え、考え方を見直して、その結果として睡眠がどのように変化するかを細かく確認しながら進めていくという治療法の一つです。

2026年から保険診療の対象に

この3つの方法が主となるCBT-Iという治療ですが、これが2026年度の診療報酬改定により保険診療の対象に追加されました。

CBT-Iの有効性そのものは以前から知られており、日本睡眠学会のガイドラインでも、睡眠薬で十分に改善しない場合や、薬を減らしていく際にCBT-Iを組み合わせることが推奨されてきました。

しかし、CBT-Iは睡眠日誌をつけたり、行動や考え方を確認したりしながら地道に進める必要があるため、医療機関側にも一定の時間や手間が必要な治療となり、これまでは自費診療になるケースも多く、実際に受けられる機会が限られていました。

今年から保険診療の対象になったことにより、今後は不眠症に対する治療の一つとして検討しやすくなりましたが、保険適用になっても、どこの医療機関でもCBT-Iを受けられるというわけではありません。

対応できるお医者さんや公認心理師などには一定の条件があるため、受けられるかどうかは事前に医療機関へ確認する必要があります。

そして当然ですが、CBT-Iを知ったからといって、現在飲んでいる睡眠薬を自己判断で急に中止したり、減らしたりはしないでください。

服用中のところで急に減量すると、かえって眠れなくなったり、別の症状が出たりすることもあるため、お薬の調整は必ずお医者さんと薬剤師と相談しながら行ってください。

睡眠薬を飲んでも眠れないとか、お薬を減らしたいという人でCBT-Iに興味がある方は、睡眠外来のある病院に相談していただければと思います。

ちなみに、現在睡眠薬を飲んでいない方でも、睡眠への何らかの悩みがある場合は、無理のない範囲で考え方を見直して、自分の体に合った睡眠のとり方を考えてみるのも良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属