外出先でのトイレに悩みがある時
10月に入り、猛暑日ほどの暑さは落ち着きつつありますが、日中はまだ30度前後になる日もあります。
この時期は、旅行やお出かけが増える行楽シーズン」と呼ばれることもありますが、それと同時に長時間の移動でトイレが心配、という声を耳にします。
患者さんの中には、出先でトイレが見つからないのが不安、と話す方も少なくありません。
実はこの季節は、寒冷利尿と言い、寒暖差による自律神経の乱れや発汗量の減少などによって膀胱が敏感になり、頻尿や残尿感といった排尿のトラブルのリスクが高まる季節でもあります。
今回はこれまでと少し趣向を変えて、トイレや排尿のお悩みについて、まとめてみたいと思います。
男女で異なる排尿トラブル
まず、実は排尿に関する悩みというと、男女で傾向が異なるという特徴があります。
女性では、くしゃみやジャンプなどの動作で尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁、急な尿意に間に合わない切迫性尿失禁などの種類があり、また体型の違いによって膀胱炎が慢性的になり、繰り返すケースも多いです。
反対に男性では、加齢に伴う前立腺肥大によって尿の通り道が狭くなり、尿の出にくさや残尿感を感じやすくなったり、夜中に何度も起きるなどの症状も多くなります。
そして男女ともに起こり得るものとしては、過活動膀胱によって突然強い尿意を感じて我慢が難しいとか、長時間座りっぱなしの移動によって骨盤底筋が緩み、尿失禁や残尿感が起きやすくなることもあります。
排尿について病院受診が必要となるサイン
頻尿や尿漏れなど、大半の排尿トラブルは、年齢のせいだから仕方ないと考えられがちですが、注意すべき症状も存在します。
例えば、発熱や腰痛、寒気や吐き気などを伴う場合は腎盂腎炎という、膀胱炎が深刻になった病の可能性があり、救急での受診が必要です。
また、血尿や排尿時の強い痛みを伴う膀胱炎も、自然では治りにくいため、抗菌薬による治療がベストです。
膀胱炎は市販薬もありますが、悪化してしまうと腎臓まで炎症が広がることがあるため、疑いがある場合は泌尿器科を受診するのがおすすめです。
ちなみに、糖尿病によって頻尿が起きているケースがあり、排尿異常を通じて初めて糖尿病に気づくということもありますので、注意してください。
旅行を快適にするための予防
最後に、排尿トラブルの予防としては、日常生活の中でできる工夫が大切です。
まず水分補給は我慢せずに、こまめに摂ることが大切です。
トイレに行きたくなるのは、大量に水分を摂ったあとですので、一度に大量に摂るのではなく、コップ1杯ずつを5〜6回に分けて飲むのが最も理想で、長距離移動の直前に大量に飲むのは控えてください。
また、カフェインやアルコールは利尿作用があるため、出発の2時間前からは避けるとより安心です。
温度も冷たいのよりは温かいのを選んで、腹巻きなどでお腹を冷やさないようにすると膀胱への刺激を減らせますのでおすすめです。
女性でかかりやすい腹圧性尿失禁の場合は、文字通り腹圧に関連するものですので、お薬で治すことよりも、骨盤底筋という筋肉が重要になるため、その部分のトレーニングが必要になります。
これはいわゆる筋トレではなく、お尻を締める感覚を養うような訓練で、10秒間お尻を締め、10秒緩めるという運動を1日5セットから10セット続けるというものです。およそ週5日、8週間以上続けると改善する、というエビデンスもあるため是非試してみてください。
そして男性の前立腺肥大による排尿困難には薬物療法が中心ですが、残尿感がある場合は二段排尿と言い、一度立ち上がって再度座り直して、排尿しようとすると出し切れることもあります。
また、晩酌ではなく、寝酒として寝る直前にお酒を少し飲むというものがありますが、アルコールをとると内臓が休めなくなり、またトイレに起きる可能性が一気に高まりますので、避けていただければと思います。
