救急車の有料化!今後はどうなるの?#778

全国二例目となる救急車の有料化条例

先日、三重県の松坂市で、救急車を有料とする条例が決定されました。

今年6月1日の午前8時30分より、出動1件につき7700円とされています。

有料化の対象となるのは、入院にならなかった患者さんが主で、入院にならなかった場合でも、紹介状の有無や医師の判断で有料化対象と非対象を定めるという風に運用されるようです。

実は救急車の有料化条例は、すでに他の市で施行されており、同じ三重県の伊勢市にて平成20年に導入されています。

救急車有料化の議論が出てくる背景には、やはり不要不急な救急車の利用があります。

救急車を有料化した松坂市のケース

松坂市では、2004年当時の救急車出動件数は、年間でおよそ8000件となっていました。

しかし、昨年は過去最多の1万6000件と、単純計算で2倍に増えているのです。

さらに今年の4月から、医師の働き方改革として、医師の時間外労働に条件を設けたこともあり、必要な人への早期治療をするべく、有料化に踏み切ったということです。

ちなみに、諸外国では救急車が無料の国のほうが少なく、香港、イギリス、スウェーデンあたりでは無料ですが、アメリカやドイツ、オーストラリア、フランスと言った国では有料になっています。

医療従事者にはメリットが・患者さんにはデメリットが

救急車が有料になると、当然ですが医療従事者にはメリットが多く、患者さんにはデメリットが多くなります。

医療従事者からすると、救急車が有料化すると救急車の出動件数が減ることになり、労力の軽減につながりますが、逆に患者さんから見れば経済的な理由で救急車を呼ぶのをためらってしまうことにつながります。

言い過ぎかもしれませんが、所得によって命が変わる、と言う一面が生まれる恐れもあると言えます。

さらに言い換えれば、お金を払うのだから好きに呼んでも良い、という意識を招く可能性もゼロではないと思います。

ですが、今後の医療体制を考えると、医療に自己負担があるように、救急車の利用も自己負担が必要になってくるというのは避けられないと思います。

119番以外に相談するという選択肢を

最後に、救急車の出動件数が増加しているのは、119番以外での緊急時の相談先が認知されていないのも一因と考えられます。

全地域ではありませんが、主要な都市では#7119と言う番号にて、24時間365日受け付けている医療相談ダイヤルがあります。

また#7119が無い地域でも、各自治体の機関が設置した救急のコールセンターがあると思います。

それ以外にも、薬局の薬剤師も健康相談の窓口の一つになります。

前述したように、今後は恐らく全国的に救急車の有料化の議論が本格化してくると予想されますので、是非、身近にある相談窓口を知っておいて頂けると良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属