遅延性アレルギー検査って意味あるの?#697

後から出て来るアレルギーの検査

先日、アレルギーに関連したコメントで「遅延性アレルギー検査ってどう思われますか」といったものをいただきました。

通常の花粉症など、アレルギー反応を起こす物質が体内に入ってから症状が出るまでは、およそ2時間以内です。

花粉を吸い込んで鼻水やくしゃみが出る、何らかの食べ物を食べると腫れや蕁麻疹のような拒否反応が2時間以内に出る、というようなものは「即時性アレルギー」となります。

遅延性アレルギーとはその逆で、アレルギー反応を起こす物質が体内に入ってから、24時間以上経ってから出て来るアレルギーのことです。

呼び方がいくつかあり、非即時型とか、遅発型という言い方がされることもあります。

この遅延性アレルギーは即時性アレルギーよりも極めて分かりづらく、判別が難しいため、専用の検査があります。

しかし、コストが非常に高く、安価なものでも2万5000円ほどと、手軽にはなかなかできません。

今回はアレルギーの中でも、この遅延性アレルギーについて詳しくご紹介していきたいと思います。

体調不良として出てくる

通常の即時性アレルギーは、鼻水やくしゃみ、目のかゆみと言った症状がすぐに表れますが、遅延性アレルギーは肌荒れや腹痛、便秘、下痢、頭痛と言ったいわゆる体調不良の症状として出て来るため、アレルギー反応を起こしているとは分かりづらいという特徴があります。

今回の本題となる、遅延型アレルギーの検査ですが、これははっきり言って、意味が無いと言えます。

その理由はいくつかありますが、簡単に言うとアレルギーを起こさない人でも、検査によって陽性が出ることがあるためです。

通常、アレルギーに対する抗体があると、その抗体が働くことによってアレルギー反応が起きますが、抗体があっても特に働かず、アレルギー反応が起きないという事があります。

しかし、検査によってその抗体が見つかると陽性となりますので、結果として、アレルギーを起こさないのに検査上ではアレルギーを持っている、ということになるのです。

そしてもう一つ、血液検査によって抗体を調べることもありますが、これは単純に何の食べ物をたくさん食べていたかによって出る結果が変わるだけ、という可能性もあるのです。

さらに言うと、遅延性アレルギーの検査と他のアレルギーの検査では、結果が一致しないこともあります。

以上を踏まえると、遅延性アレルギー検査によって陽性と出たからと言って、その食べ物を全て一律で除いていくとしたら、アレルギー無くて安全とされる食べ物、栄養素がどんどん無くなって行き、栄養不足になる恐れもあるのです。

こうしたこともあり、日本を含めアメリカや欧州など世界各国のアレルギー学会では一律で「推奨しない」という声明を発表しています。

アレルギーがどれほどの強さで出ているかの判断には有用

アレルギー学会では推奨しておらず、現状だと正直に言って不正確な検査、と言えますが、遅延性アレルギー検査を実施している病院は実は結構多いです。

その理由は正直いまいち分かりませんが、例えば自費診療で単価が高いことから、利益のために行っているということもあります。

そう言うと、完全に無意味なのにお金のための検査になっている、と思われそうですが、100%そうとは言い切れません。

総合的に、アレルギーの症状がどれほど起きているか、遅延型アレルギーがどれほどの強さで出ているかを確かめるのには有用です。

特に、「リーキーガット症候群」という、腸に何らかの原因で穴が開き、そこから消化されるはずの食べ物が体内に漏れるという病があります。

この病によって漏れ出た食べ物が、体内で有害なものと認識され、アレルギー反応として出ている可能性があり、その検査として遅延性アレルギー検査が有効なのです。

なので順序としては、まず何らかの検査をしてアレルギー反応が出ていることが分かり、その上でリーキーガット症候群の可能性があるため遅延性アレルギー検査をして確認する、と言うのが効果的な使い方になります。

普通のアレルギー検査のように、何の物質によってアレルギーが出ているかを確かめるのには不向きですが、こうした使い方では便利な検査と言えます。

遅延性アレルギー検査についてきちんと調べる

ただ、このリーキーガット症候群自体かなり稀なもので、さらにリーキーガット症候群を確かめて治療するという目的で、遅延性アレルギー検査をやっているお医者さん、と言うのもおそらく多くはないと思います。

もし遅延性アレルギー検査について検討する際は、かかる病院の公式サイト等を見て、きちんとリーキーガット症候群などについて触れているかを確認するのが確実です。

単に「体調不良はアレルギーによるものかも」と言う程度の情報しかない場合は、もしかしたら利益のためにやっている可能性もあると考えて良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属