秋の味覚で腸活を
最近、在宅の患者さんとのやり取りのなかで、お腹の不調を訴える患者さんが目立っている印象があります。
例えば夜通しお腹が痛んで在宅のお医者さんに連絡したものの、特に大きな原因がなく、整腸剤だけ処方されたというケースもありました。
また、前回取り上げた夏バテの延長ともいえる秋バテによる症状が見られる方もいます。
特に腸の働きは、自律神経の影響を受けやすいため、この時期は「腸活」による体調管理が重要になります。
今回は前回の秋バテにも関わってくる、胃腸について、今一度まとめて行きますので、是非注意して頂ければと思います。
腸内環境を整える食物繊維と発酵食品
腸活とは、簡単に言うと腸内に存在する善玉菌や悪玉菌といった腸内細菌のバランスを整えて、善玉菌が喜ぶ環境をつくるという活動です。
食物繊維や発酵食品、オリゴ糖などを積極的に摂取するだけでも腸活になり、例えば食物繊維は小腸で吸収されずに大腸まで届きますが、大腸まで届くということは大腸の中を掃除するように、便が健康な状態になるため、便秘改善や血糖値・コレステロールの低下の効果が期待できます。
この食物繊維をとても効率よく摂取できる、秋の味覚となるのがキノコ類です。
マイタケやぶなしめじ、えのきといったものは、100グラムあたりでおよそ3、4グラムほど含まれているため、1日1パック食べるだけでも非常におすすめです。
そしてヨーグルトや納豆、キムチといった発酵食品には、ビフィズス菌などの善玉菌が含まれており、これらを継続して摂ることが腸内環境の改善に役立ちます。
ちなみに乳酸菌などの食品において、生きたまま届く、というキャッチコピーがあると思いますが、菌は胃酸で死んだ状態で届いても全く問題はなく、死んだ菌が腸へ行くと生きている菌の餌となるため、腸内の菌が活発になることには変わりありませんので、安心していただければと思います。
腸活のメリットと注意点
腸活のメリットは、腸内環境が良くなることに尽きますが、具体的に言うと便通が安定して、腹部の不快感が改善されるとか、糖尿病の傾向がある方では血糖値スパイクの抑制や、コレステロール低下などの効果もあるため、生活習慣病の予防に大いに役立ちます。
また例えば、抗菌薬を使うと下痢が出るという方がいますが、これは風邪用の抗菌薬で腸内の良い菌を殺してしまい、結果としてお腹を壊した状態になり、下痢になることがあります。
その場合でも、普段から腸活をして腸内環境をしっかりと整えておくと、お腹が壊れにくく、下痢予防の効果も期待できます。
ただし一方で、突然意識して大量の食物繊維を摂るとガスがたまりやすくなるため逆に悪影響になり、発酵食品でもキムチや漬物のような塩分の多い発酵食品を過剰に摂ると、当然塩分過多となって血圧上昇のリスクがあるため注意が必要です。
また、食物繊維を摂る際は、必ず水分を十分にとらないと、便が硬くなり、便秘になりますので、必ず水分と同時にとるようにしてください。
さらに体質によっては、ヨーグルトなどの乳製品が合わないこともあるため、注意してください。
もし、自力で腸活をおよそ2週間以上試してみても便秘が続いたり、さらに血便や発熱が出てくる場合は重大な病の可能性がありますので、お医者さんに相談していただければと思います。
はじめに実践しやすい腸活
最後に、今から始めやすい、具体的な腸活についてですが、朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲んで、朝食に納豆ご飯とわかめかあおさ入りの味噌汁などを食べるようにすると、発酵食品と食物繊維が同時に摂れます。これだけでも腸活の第一歩となりますので、おすすめです。
次に、前項でもご紹介したキノコがとても便利で、出来れば1日100グラムずつほど、パック1つ分のキノコを食べるのがベストです。
食べ方としてはどんなものでも問題無く、味噌汁などで煮込んで食べるものや、炒め物、てんぷらのような揚げ物でも大丈夫です。
発酵食品について、まずヨーグルトは1日150グラムを目安にして、オリゴ糖や果物を加えて食べるとより美味しく続けやすくなります。
水分は起床時以外でもこまめにとるのが最善で、時間にすると午前10時、昼食時、午後3時、夕食時、入浴後などでコップ1杯ずつ飲むと1日の必要量を満たせます。
食事については、毎朝自宅で自炊するというわけではなく、コンビニで買えるもので充分可能ですので、日常生活の中で無理なく続けてみてください。
そしてやはり、食生活だけでなく運動も重要になります。これも20分から30分程度、早歩きや軽いストレッチを習慣にするだけでも腸の動きが活発になりますので、是非習慣づけていただくと良いかと思います。