「痩せホルモン」でダイエット?
去年最後、前々回の配信で「メディカルダイエット」についてご紹介しました。
糖尿病のお薬を用いたダイエットについてですが、今回はもう一つ主流な、痩せホルモンを使ったダイエットについてのお話しです。
正式には「GLP-1」というホルモンで、こちらも前回のように、糖尿病治療に用いられるお薬をダイエット目的で使う流れになります。
お薬でGLP-1を出しやすくする
まず、体内で働くホルモンの一つに、血糖値をコントロールするホルモンがあります。
体の血糖値の上下を司るホルモンがありますが、その働きを抑えるホルモンが、「GLP-1」というホルモンになります。
GLP-1はもともと体内にもあるホルモンの一つで、血糖値以外にも腸の働きを緩やかにするとか、食欲を抑えるといった働きもあるため「痩せホルモン」と呼ばれることもあります。
これが体内で増えることで、例えば空腹になりにくくなって腹持ちが良くなるとか、間食が減るといった効果が表れます。
しかし、このGLP-1は、体内で出る量に非常に個人差があるという特徴があります。
つまりこれが出やすい人は痩せやすく、出にくい人は太りやすい傾向がある、という意味です。
そこで、このGLP-1を出しやすくなるお薬を注射して、食欲を抑え、痩せるのを助けるようにします。
これがGLP-1を使ったメディカルダイエットとなります。
「肥満」ではない人には根拠が乏しい
ただ、この手法も前回のお話しのように、あくまでも糖尿病のお薬ですので、完全に肥満の人で糖尿病と認められる人には効果がありますが、そうではない人にはまた確かな効果、根拠は認められていません。
具体的には、BMIという太っているかどうかを判断する指標で、30以上の方には適していることが分かっています。
30以上の方では、この方法で平均で6キロ程度体重に変化があるとされています。
しかし、BMIが30以上の「肥満」となるレベルは正直難しく、一般的な肥満傾向や肥満気味となる方で、いわゆる「ぽっちゃり」の方はBMIが30になることはほぼないため、そういった方への効果は認められていないのです。
これはデータが乏しいという意味ですが、これはそもそも糖尿病ではない人が使うと体重が減るのか、という検証をしていないためです。
食欲をコントロールする点では効果が高い
ですが最初に書いたように、空腹になりにくくなる効果がありますので、食欲をコントロールして、食事量や食事のリズムを習慣づけるという点では、かなり効果が高いと言えます。
例えば食事のリズムがバラバラで、間食や夜食が多くなってしまうという場合では、このお薬で血糖値の上下がある程度穏やかになりますので、おなかが不用意に空く回数が減ります。
ただしこれは言い換えれば、食事量が減らなければ体重は減らず、効果は得られません。
例えばストレスによって暴飲暴食をしやすい人とか、ストレス解消目的でお酒をたくさん飲んでしまうといった場合では、おなかが空いていないにもかかわらず大量にカロリーを摂取してしまうため、このお薬を使っても意味はありません。
また全体的に体重が落ちるということですので、部分的に痩せることもこのお薬ではできません。
GLP-1は生活習慣の改善である程度増える
前述のように、このホルモンは体質によって個人差が大きいですが、一応は体内で生まれるホルモンですので、生活習慣を改善することで分泌量が増えることがあります。
GLP-1は小腸から分泌されるため、腸内環境を整えることが非常に大切です。
腸内環境については562回で詳しく触れておりますが、簡単に言えば健康に良い食べ物を食べることが重要です。
まず善玉菌がたくさん含まれている発酵食品、お漬物や納豆、乳製品だとヨーグルトやチーズ類で、もう一つ善玉菌のエサとなる食物繊維、オリゴ糖が豊富に含まれている食品、野菜やキノコ、海藻類がおすすめです。
ここまではこれまでの配信でも度々お伝えしていますが、今回のGLP-1について、もう一つ重要になるのが「EPA」という「油」の成分です。
EPAはサバやサンマ、イワシといった青魚の脂に多く含まれ、積極的に摂ることで体内のGLP-1が増えますが、注意するのが腸内環境が整っていないとどれだけEPAを摂ってもGLP-1には影響せず、意味がないという特徴があります。
ですのでやはり、まずは腸内環境を整えることが大切になります。
食べ物以外でも、ストレスや睡眠不足ももちろん胃腸の調子には大敵ですので、きちんと対策していってください。
GLP-1の費用はおよそ3万円程度
最後に、メディカルダイエットとしてGLP-1のお薬を使う場合ですが、およそ2万5000円から3万円程度で、プラス診察料などがかかります。
そして前回と同じく、ダイエット目的であれば保険が効かず、全額自費となります。
食事に少し発酵食品を足すなどである程度の改善が見込めますので、やはり前回のように、コストの部分では考える余地があるかと思います。