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今回は前回に続いてイベルメクチンのお話と、実用化か始まりつつある「抗体カクテル療法」の最新情報について
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「イベルメクチン」「抗体カクテル療法」の最新情報
今回も前回に続いて抗体カクテル療法」についての最新情報をまとめていきたいと思います。
イベルメクチンについては前回537回の配信で詳しく触れておりますので、是非そちらも併せて参考にしていただければ幸いです。
イベルメクチンの懸念点
まず、イベルメクチンについて簡単にまとめると、現在各国で実験的に使用されており、効果が見られたというデータも着実に集まっています。
ただし、症例数という数としては圧倒的に少なく、また正確に行った治験のデータは無いため、きちんと発表できるエビデンスは無い、というのが現状です。
さらに言えば、逆にイベルメクチンを使っても効果が無かったという報告も当然あります。
どういう風に使うことで効果が得られて、どういう方で、どういう状況では効果が無いのか、といったことを、実験を重ねてきちんと確かめることが必要なのです。
予防的な使い方での安全性は確認されていない
前回、軽く触れましたが、イベルメクチンを配布して予防的に使用したという地域もあります。
事前に飲んでおいて、感染を防ぐという使い方ですが、実はこの使い方での安全性は確認されていません。
イベルメクチンの大元は、乾癬というヒゼンダニを殺すという効果があるお薬です。
使い方は、1回飲んだらヒゼンダニがいなくなって治療完了、というものですので、何かの予防として2週間に1回、数週間に1回という風に使用することは想定されておらず、こうした使い方での安全性は確認されていないのです。
またイベルメクチンは、妊産婦さんに注意が必要ですので、使いにくいお薬の一つとも言えます。
ちなみに、現時点で海外からイベルメクチンを個人輸入して手に入れるという話題がありましたが、イベルメクチンに限らずお薬の個人輸入は偽物が非常に多いうえに、偽物が来た場合の取り締まりも現状の法律ではできないため、お薬の個人輸入、海外からの通販は辞めてください。
「抗体カクテル療法」の最新情報
次に、抗体カクテル療法についてですが、まず「抗体」とは、人間の免疫システムが生み出した特定のウイルスを攻撃する細胞のことです。
具体的に言うと、ウイルス本体の表面に「スパイク」というタンパク質があります。
このスパイクに、体内でできた抗体がくっつくことで、そのウイルスは体内の他の細胞にくっつく余地が無くなります。
ウイルスは他の細胞の力を借りて、自分の分身を増やしていく仕組みですので、抗体が先にウイルスにくっつくことで、他の細胞につくことができなくなり、自らの分身を増やすことが不可能になります。
ですので、十分な抗体が体内にあれば、ウイルスが体内で増えて悪影響を出す前に、体内から消えて行くということです。
この抗体を体内で作るのではなく、事前に作って点滴を使って体内に入れる、というのが「抗体カクテル療法」です。
そして「カクテル」というのは、このcovid-19の変異株に対応するための施策です。
従来型のアルファ株のみならず、デルタ株やラムダ株といった様々な強力な変異株が確認されているため、2種類の抗体を混ぜて同時に接種したら効果が上がるのでは、ということで作ったのが現在の「抗体カクテル療法」です。
効果はしっかりと確認されており、入院率、死亡率を7割減することが分かっており、またデータ上では家庭内感染の予防にも役立っている可能性が高いこともわかっています。
ですので、治療薬でありながら、感染者数を減らす効果も秘めているお薬なのです。
抗体カクテル療法のデメリット
ただ、この抗体カクテル療法はなかなか一筋縄ではいかず、懸念点がいくつもあります。
まず抗体カクテル療法を使う場合は、軽症や中等症の方で症状が軽いうちに、症状が出てからおよそ7日以内に使う必要があります。
なぜかというと、体内でウイルスが増えるのは発症から一週間以内だからです。
1週間を過ぎると、体内の免疫が抗体を作るため、わざわざ抗体を外から打つ意味が無くなるのです。
また重症化して免疫機能が激しく低下している場合でも、同様に効果がほとんど無くなります。
重症はサイトカインストームによって引き起こされており、ウイルスが直接の原因ではないため、この段階でウイルスを減らしても、治まりません。。
ちなみにサイトカインストームについては450回のアーカイブで詳しく触れておりますので、もしよければそちらも参考にしてみてください。
そしてもう一つが、以前わずかに触れましたが抗体カクテル療法自体のコストが非常に高く、そもそも薬が足りない恐れもあるという点です。
抗体カクテル療法の承認は特別承認という形で、やむを得ず特別に承認した形ですので、値段が現時点で定まっていませんが、製薬にかかるコストが極めて高いことはわかっています。
このコストから鑑みると、おそらく1回数十万程度の費用が発生する計算になるため、軽症者の治療にどれだけ使用できるかは正直心配なところもあります。
さらに、現状では軽症者の方は全国的に、病床ではなく自宅療養やホテル療養が主ですので、発症から7日以内にスムーズに投与できるかも疑問が残ります。
東京など一部の地域では療養先のホテル等と連携して、抗体カクテル療法を使える仕組みを整えています。
ただ現状、最も多いと思われる自宅療養者へ迅速に使用するためには、訪問診療のようなことを今以上に入念にしていく必要があると思います。