治ったはずなのにだるい。長引く風邪・インフルからのリカバリー術#945

風邪やインフルエンザがなかなか治らないとき

先日、インフルエンザのお薬についてコメントを頂きましたが、その方からお礼のコメントを頂きました。

今でも倦怠感が強く、なかなか治らずに困っている、というもので、実際に今年は自分の身の回りでも長引いている患者さんが多い印象です。

一般的には1週間前後で治ることが多いですが、体質や免疫力などによっては長引くことももちろんあります。

今回は前回にも関連して、風邪からの回復について詳しくご紹介してみたいと思います。

回復の時間が必要

風邪もインフルエンザも、熱が下がると治ったと思われそうですが、実は体の中ではウイルスによって傷ついた組織を修復する作業があります。

ですので、完全に回復して元に戻るまでには、風邪であれば3日から1週間、インフルエンザでは1週間から2週間ほどかかります。

また、体内にウイルスがいなくなった後でも、気道の炎症が残ると神経が過敏になり、冷気やちょっとした刺激で咳が出てしまう遷延性の咳が起きたり、逆に鼻から副鼻腔へと炎症が広がると副鼻腔炎へと移行するケースもあります。

発症中はもちろん、症状が無くなってからもできるだけ安静にしておくことが大切になります。

回復を遅らせる体の条件と生活習慣の影響

これは例えば、アレルギーや喘息、副鼻腔炎、逆流性食道炎が持病としてある方は、もともと気道が敏感で、咳が長く続きやすい傾向があります。

また、喫煙や年齢、睡眠不足、強いストレス、栄養バランスの乱れなどが重なると、免疫が本来の力を発揮できず、治りにくくなることが分かっています。

熱が下がったからとすぐ出勤したり、溜まった家事を一気に片づけようとしたりすると、まだ治りきっていない体に負担がかかり、結果的に長引く悪循環が生まれます。

新型コロナの研究においても、生活習慣や体質が回復スピードに影響していることが示されており、治りかけの時期こそ慎重なペース配分が大切なのです。

睡眠と栄養補給と水分補給が基本

治りかけを少しでも早く乗り切るためには、やはり基本的なことをしっかりとやることに尽きます。

睡眠、食事、水分補給を確実にすることが重要です。

例えば、いつもの2倍くらいの時間横になって、体力を使わないように温存するのも手です。

特にインフルエンザの場合は、解熱後24時間はむやみに動かずに安静にする、休む技術が回復を左右します。

水分補給は1日トータルで1.5Lを目安に、1回の量はコップ半分程度でこまめに分けて飲むのがおすすめです。また、ビタミンとミネラルの補給も兼ねて市販の1日分のビタミン飲料も便利に使えます。

食事については、卵入りの雑炊、おでん、豆腐、乳製品のチーズやヨーグルトなど、消化が良くタンパク質がしっかり摂れるものを選ぶと、一層修復が進みます。

ちなみに、お薬は症状を抑えるものですので、症状が落ち着いて治りかけの時に使うお薬、というものはありません。

ただ、漢方薬には体力回復を目的としたものもあるため、役立つことがあります。

例えば咳が長引く場合では、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、食欲不振やだるさが残る場合には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が選択肢になりますので、もし興味があれば漢方薬に強いお医者さんや薬剤師に相談していただければと思います。

長引かない体をつくる生活習慣と「治りかけのルール」

最後に、これも基本的なことにはなりますが、風邪を長引かせないためには、やはり日頃から免疫力を維持する生活習慣が欠かせません。

例えば運動も、週トータルで150分ほどの運動を、自分が歩けるペースで行うだけでも効果的です。

また睡眠は、1日7〜8時間の睡眠を確保することは、明確なエビデンスがあり、風邪が発症しにくく、治りも早いという研究結果が出ています。もし睡眠が短いというときは、まずは30分だけでも増やしてみると、体力が回復しますのでおすすめです。

食事も毎食1品でも、ゆで卵やサラダチキン、ヨーグルトのようなタンパク質が多いものをプラスするだけで違いが出ます。

もちろん、ストレス解消も大切で、好きな音楽を聴く、好きな香りを嗅ぐ、触り心地の良いものを触るなど、お金をかけずにすぐできるストレス解消法を複数持っておくと、免疫維持に役立ちます。

そして、もし万が一発症してしまった場合は、治りかけで無理をしないというルールを普段から決めておくことが重要です。

例えば、症状が引いて治りかけの時は必ずもう1日は休むと決めて、時間を確保するなどをあらかじめルールとして決めておくと、精神的にも楽になり、大きな助けになりますので、是非試してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属