アニサキス感染症が流行
先日、アニサキス感染症の診断を受けたという患者さんが、1週間で二人も来られました。
とにかく胃が激しく痛かった、と言っていて、改めてその症状の強さを感じました。
実は近年、日本ではアニサキス症が流行しており、特に魚介類を食べる方は注意が必要な感染症になります。
今回はアニサキスについて、詳しくまとめて行きたいと思います。
アニサキスの正体
アニサキスとは、長さ2〜3cm、幅0.5mmほどの白い糸のような線虫の名称です。
マグロやヒラメ、サケ、サバといった魚全般に生息しますが、イカなどからでも感染するケースがあり、魚介類全般に注意が必要になる感染症です。
ちなみに日本以外では生の魚を食べる習慣が少ないため、アニサキスの症例は少ないとされています。
アニサキスは通常、魚介類の内臓に寄生しており、宿主となる魚が生きている間は内臓に存在しますが、その魚の死後は筋肉へ移動することがあり、そのまま身を生で食べることで人間の胃や腸に食いついてしまい、食中毒の症状を引き起こします。
急性アニサキス症は、体内に入ってからおよそ12時間以内に発症した場合で、激しい腹痛痛や吐き気が起こります。
胃で発症せず、腸に移行して発症した場合は、数十時間後に強い腹痛が現れることもあります。
またごくまれに、アニサキスによって重篤なアレルギー症状となる、アナフィラキシーショックが起こることもありますので、蕁麻疹や呼吸困難が起こった場合には、救急による対応が必要になります。
アニサキスの診断と治療
胃の痛み止めはアニサキスによる腹痛にも効果がありますが、体内に入ったアニサキスが死滅するわけではないため、お薬の効果が切れたら再度激しい痛みが出てきますので、きちんとした治療が必要です。
もし、魚を生食して数時間後に激しい腹痛が起こった場合はアニサキスを疑って、消化器内科のお医者さんに相談してください。
消化器内科で内視鏡検査を行い、胃カメラによって直接確認します。
ただし、アレルギーのアナフィラキシーショックによる激しい症状の場合は、どういう種類の魚でいつの時間に食べたかなど、一時的なものかどうかを確認する必要があるため、可能であればメモをとっておくと確実です。
アニサキスを予防するために
最後にアニサキス感染症の予防についてですが、まず最初に大切になるのが、魚の購入時です。
できるだけ新鮮なものを選ぶことはもちろんですが、特に切り身ではなく、内臓が入った魚を購入して調理する場合は、すぐに調理を始めて内臓を取り除くことが予防につながります。
調理時は、アニサキスは60℃以上で1分以上の加熱、もしくは-20℃以下でおよそ24時間以上冷凍すると死滅するため、加熱調理や冷凍処理されたものは安全に食べられます。
お酢やワサビ、醤油ではアニサキスを死滅させる効果はなく、しめ鯖や昆布締めでも感染リスクは残ります。
また、完全養殖の魚や、生食用と表示されたものはアニサキスの感染リスクが低いとされますが、確実に居ないというわけではありませんので、注意してください。