人が目の前で倒れたら?#719

救急対応が必要になった時

当薬局では、土曜日にマルシェという形で野菜の販売を店先で行っています。

先週土曜日のマルシェで、お客さんの一人が倒れた、ということがありました。

倒れた方は高齢の方で、その場にいた店員と自分とで対応に当たり、何とか事なきを得ました。

職業柄、高齢の方や持病のある方と接する機会が多いため、人が急に倒れる場面に遭遇することはそれほど珍しくありません。

今回はこの経験をもとに、もしも人が目の前で倒れたら、救急対応が必要となった時の行動について、簡単にですがまとめていきたいと思います。

まずは安全の確保を

まず第一に、何よりも安全確保を念頭に置いてください。

以前、交通事故について触れた際にも安全確保を、とお伝えしましたが、これは交通事故ではない場合でも同様です。

倒れたのは歩道だとしても、車が走る道路が近ければ、自分が車にひかれる可能性があり、また工事現場の近くなどであれば、思いがけず工事の妨げになってしまい、二次災害的に事故が広がる可能性もあります。

ですので、倒れた方の安否よりも、まずは自分が安全かどうかを確認して、それから対応に当たるようにしてください。

もし位置的に危険な場合は、患者さんを移動させるのも検討してください。

ちなみに当薬局の前で起こった今回のケースは、当薬局があるのが団地の中で、車が通る道に面していなかったため、車による被害は起こらない状態でした。

安全が確保できれば、次に患者さんの容体を見ます。まずは声掛けをして、意識があるかどうかを確認してみてください。

この時、患者さんの体は決して強く叩いたり、ゆすったりせずに、肩をほんの少しの軽い力で叩くようにするだけにとどめてください。

内出血などを起こしている状態で体を不用意に動かしてしまうと、どんどん症状が悪化してしまい、命を落とす原因にもなりかねません。

ですのでまずは声を掛けてみて、ゆする場合は肩を軽く叩くだけにしてください。

本人の状態を確認したら、できれば周りの人に助けを求めるのがベストです。

他人がいると、例えばAEDを持ってきてもらう間に119番に電話をするなど、二つの作業が同時にできるため、救命処置が1秒でも早く進められることになります。

なのでもし周りに人がいる場合は、できるだけ積極的に、助けを求めるのが最善です。

今回の方は倒れた後でも意識がありましたが、自力で立ち上がれず、頭を打っていたため内出血の可能性があり、119番をして救急車で運んでもらいました。

119番で聞かれる質問

今回は患者さんの対応を周りの方に頼んで、119番への電話は自分が行いました。

自分は仕事柄もあり、119番への通報は度々しているためそれほど緊張することはありませんでしたが、慣れていないとかなり緊張するかもしれません。

通報の流れと、通報した際に聞かれる質問を簡単にまとめると、まず初めが「火事ですか?救急ですか?」という質問です。

119番は救命と火災のための緊急通報ですので、まず救急車と消防車のどちらが必要かを伝えます。

もし可能であれば、救急車が必要かなんとも言えないような場合は「救急です」と伝えて、絶対に救急車で運ぶ必要がありそうであれば「救急車をお願いします」、という言い方をするのも手です。

次に住所を聞かれるので、できれば正確な住所を言えるのが一番ですが、とっさに出てこない場合は地名と目立つ建物を伝えてください。

郊外や出先で、住所が全く分からないようなときは、電柱に書いていることが多いので見てみてください。

もし近くに民家など人が住んでいそうな場所があれば、そこに行って助けを求めるのももちろん大切です。

次に患者さんの容体を尋ねられます。その方に何があったのか、出血や怪我の状態はどうなっているかを伝えますが、オペレーターは慣れているので、落ち着いて話して大丈夫です。

場合によっては、必要な応急処置の指示をされることもありますので、可能な限り指示に沿ってください。

電話を一旦切って、救急車が来るのを待ちますが、もし意識があって受けごたえができるようであれば、声をかけ続けて患者さんが気を失わないようにしてください。

意識がもうろうとしている中で声掛けが無いと、本人はネガティブな方向に考えてしまったり、意識を失ってしまってより重篤な事態になることもあるため、受けごたえができる状態であれば絶えず声をかけて、やり取りを続けるようにしてください。

意識が無いときはAEDを

もし、受けごたえが完全にできず、意識が無い場合はAEDを使ってください。

心臓マッサージも必要ですが、特に訓練をしていない方が正しくやるのは、かなり難しいです

ですので、意識が無い場合はできるだけ他人に知らせて、心臓マッサージをできる人を探すのが得策です。

この時、もし街中でコンビニなどがあればAEDを持ってきてもらうのも手です。

AEDとは簡単に言うと心臓に電気ショックを与えて、心臓の動きをリセットさせる装置のことです。

駅や空港、バスターミナルのような公共施設や医療施設には必ず置いてあり、大規模なスーパーなどにも設置されていることが多いので、もしもの際は活用してください。

救急車が来るまでの間、AEDを使ったり心臓マッサージをしますが、一番重要なのは血液を循環させることにありますので、実は心臓マッサージの際の人工呼吸は必ずしも必要ではありません。

とにかく、胸の真ん中を体重をかけながら両手で突くように押してください。

言葉で説明するのが非常に難しいため何とも言えませんが、みぞおちの少し上を目安に、手を置いて力強く押してください。

真似事でも良いので心臓マッサージをしていると、医療従事者の方が見かけたりしたら交代してくれることがあります。

救命士や看護師さんのような、訓練を受けている人は心臓マッサージの大変さと重要さを知っているため、途中で代わってくれることがあります。

ですのでできるだけ、患者さんにも声をかけ、周りの人への助けを求めながら心臓マッサージするのが最善です。

普段はなかなか無いことで、いきなり対処するのは難しいと思いますが、まずは安全の確保と、周りの人に助けを求めることを念頭に置いておくと良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属