激しい吐き気が突然に!ノロウィルスから守る方法#941

今年もノロウイルスに要注意

前回インフルエンザについて取り上げましたが、今回はノロウイルスについてです。

voicyでも毎年取り上げておりますが、今年も充分に警戒していただければと思います。

簡単におさらいすると、ノロウイルスは11月頃から2月頃にかけて流行しやすい、胃腸炎のウイルスで、毎年この季節になると患者数が増えていきます。

毎年12月末から1月にかけて本格的なピークを迎え、2月〜3月頃には落ち着く、というのが一般的です。

ただし今年は、例年よりもやや多めの発生状況ですので、一層注意が必要です。

ノロウイルスの症状

まず、ノロウイルスの症状についてですが、非常に特徴的なもので、突然強烈な吐き気が現れ、その後に下痢だけが続く、というパターンが大半です。

吐き気嘔吐、下痢以外の症状となる、発熱などはほとんどでないのです。

そして後述しますが、ノロウイルスは感染力が非常に強いのが特徴で、お子さんが集まる保育施設、お年寄りがクラス高齢者施設などでは集団感染が起こることもあり、感染が起こると重大な事態となることもあります。

当然、家庭内で一人感染者が出ると、他の方に一気に広がるケースも少なくありません。

ノロウイルスの感染経路と家庭内で広がりやすい理由

ノロウイルスは、他のウイルスとは違い、一般的なアルコール消毒では殺菌できず、有機酸と言う成分が配合されたタイプの消毒剤でないと効果が得られません。

そして感染経路は、必ず口から入るといっても過言ではないのが特徴です。

例えば感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが、手指を介してドアノブやまな板、つり革、エスカレーターの手すりといった場所に生きたまま付着するため、そこに触れた手で飲食したり、口元や鼻を触ったりすると、体内に侵入して発症します。

ですので、嘔吐物などの処理をする際には特に注意が必要で、必ずマスクと使い捨て手袋を着用して、汚物の上に新聞紙をかぶせてキッチンハイターをかけて処理することが必要です。

衣類は汚れを落とし、キッチンハイターに30分から1時間ほど浸して殺菌して、他の洗濯物とは分けて洗うのが安全です。

発症時は水分補給をして、嘔吐や下痢は止めずに出し切る

感染、発症した場合についてですが、ノロウイルスには、ウイルス自体を殺して治療するという薬が存在しません。

体内に入ったらすぐさま発症して、症状が収まったということは菌がいなくなったということですので、治療薬を使うタイミングが無いためです。

ですので、治療の基本となるのは、水分と電解質を補うことに尽きます。

激しい嘔吐や下痢によって体内の水分と電解質が失われていくため、OS-1のような経口補水液を15分に1回ほど、ペットボトルのキャップ1杯程度ずつでゆっくり補給するのが、最も吸収効率が良い方法です。

スポーツドリンクでは吸収までに時間がかかり、負担もあるため、この状況では適しません。

ノロウイルスを体外に排出するまで、およそ2日間ほどは強い吐き気と下痢が続き、症状が収まったらウイルスが出切った証拠です。

逆に、嘔吐や下痢止めを使って止めてしまうと、ウイルスが体に残り続けることになるため、症状が長引くだけになります。

もし、ペットボトルキャップ1杯分の水分も受け付けずに戻してしまう場合は、自力での水分補給ができないという状況ですので、すぐに医療機関を受診して点滴で水分補給を行います。

症状が落ち着いてきたら、温かいスープなど消化の良いものをとって、少しずつ食事を再開します。

日常の手洗いと食品の加熱で防げる

最後にノロウイルスの予防についてですが、やはり最も重要なのは徹底した手洗いと手指消毒です。

トイレの後や、食事前には必ず洗う習慣をつけることが感染予防の基本になります。

前述の通り、アルコール消毒は効果がほとんど無いため、有機酸入りの、ノロウイルスにも効く、と記載されたタイプを選ぶことが必要で、保湿成分が入った商品なら、手荒れを抑えつつ消毒ができますのでとても便利です

食品からの感染では、特に二枚貝の牡蠣がリスクが高いとして有名ですが、ウイルス自体は熱にとても弱く、中心部が85度以上で1分間加熱されていれば、完全に死滅します。

ですので、鍋やフライなどで、しっかり加熱すると問題ありません。

もし、生食する場合は、自分の今後のスケジュールを考えて、万が一感染すると困るというようなタイミングは避けて、時間がある場合では食べてみる、などで工夫するのも有効です。

そして、もし汚れが付いた場合は、アルコールで簡単にふき取るだけでは効果がありませんので、必ず手指消毒用にはノロウイルス用のものを使う、掃除にはキッチンハイターのような塩素系の洗剤を用意して使う、ということを覚えておいていただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属