まだ働けてるから大丈夫?心の不調を見逃さないサイン#1026

10月10日は世界メンタルヘルスデー

前回、CBT-Iという睡眠に関する治療法について取り上げましたが、今回は心の不調などについてのお話です。

実は、10月10日は世界メンタルヘルスデーとされており、心の健康について正しい知識を持ち、精神疾患やメンタルヘルスの問題に対する偏見を減らし、必要な人を支援につなげる、ということを目的として設けられました。

今回は現代社会で生きる私たちにとってとても大切な、心の健康についてきちんとまとめていきたいと思います。

動けるから大丈夫は厳禁

メンタルヘルスを考えるうえでまず知っておいてほしいのが、動けている=大丈夫、ではないということです。

これは例えば、会社にはきちんと行ける、人に会えば普通に話せる、仕事もこなしているという人でも、家に帰った途端に何もする気が起きなくなったり、休日はほとんど寝て過ごしてしまったりすることがあると思います。

この時、一応は仕事に行けているから良い、と考えてしまいがちですが、それは一つのきっかけで、何らかのサインの可能性があります。

心の不調は仕事に行けないとか、何もできない、といった分かりやすい形で現れるとは限らず、もっと小さな変化として表れることがあります。

具体的に大きく分けると、体、心、行動の3つに変化が出ます。

まず体の変化としては、眠れないとか朝明らかに早く目が覚めてしまう、食欲がなくなる、寝ても疲れが取れない、といった症状です。

心の変化では、以前なら楽しかったことが楽しめなくなったり、不安やイライラが増えたり、何をするにも億劫になったりするなどです。

そして行動の変化は、仕事のミスが増える、人との連絡や会話を避けるようになる、身だしなみや家事など、これまで普通にできていたことが面倒になってできなくなる、といったものです。

当然、これらは仕事などの生活環境による単純な寝不足や忙しさでも起こるため、一つ当てはまっただけで病気ということではありません。

大切なのは、いつもの自分と比べてどうなのか、そしてその変化が続いているのかを見ることです。

2週間をひとつの目安に

明らかに変化していて、自分でおかしいと気づいても病院に行くのはハードルが高いと思います。

まず一つの目安になるのが、2週間という期間です。

これは厚生労働省が発表したガイドラインとなる、こころの耳でも定められていることで、気分の落ち込みや眠れない、食欲がないといった状態が2週間以上続く場合は、専門家への相談が勧められています。

あくまでも一つの目安ですので、2週間続かなければ相談してはいけないという意味ではなく、日常生活に明らかな影響が出ている場合や、つらさが強い場合は緊急を要する事態ですので、すぐに医師に相談してください。

次にかかる病院についてですが、精神科は少しハードルが高い、と感じる人は、心療内科に相談する方法もあります。

心療内科は、ストレスや心理的な要因による身体の症状を診る診療科で、厳密に言うと不眠やうつ状態を直接診るという診療科ではありません。

ですが、現在の心療内科の大半はそれらの症状も同時に診ておりますので、遠慮なく相談していただければと思います。

もし、心療内科でも受診に抵抗がある場合は、内科のお医者さんに相談して大丈夫です。

そこから必要に応じて、精神科や心療内科につないでもらう方法もありますので、活用してみてください。

もし会社で働いている人であれば、職場の産業医や保健師に相談するという手もあります。

また前述した厚労省のこころの耳などのような、相談窓口を利用することも選択肢の一つになります。

心の変化に気付くこと

今回取り上げるきっかけとなる世界メンタルヘルスデーでも言われているのが、気付いて、声をかける、話を聞く、という3段階のポイントで、これは心の変化に気付き、守るということを意味しています。

メンタルヘルスで重要なのは、自分自身の心の変化に気づくことですので、自分が不調だと感じた時は最近きちんと眠れてるか、食事が以前と比べてとれてるなどをチェックしてみてください。

時期にするとおよそ、1か月前の自分と比べてみて振り返ってみるのがベストです。

これは自分以外の身近な人でも同様で、例えば職場の仲間や家族について以前より口数が減ったとか、仕事のミスが増えた、今までなら避けなかったのになぜか他人との交流を避けるようになったなど、この人は以前と少し違うなと感じることがあるかもしれません。

そこで、疲れてないかとか、もしよかったら話を聞くよ、といった簡単なもので十分ですので声をかけてみて、もし相手が話し始めてくれた時は、すぐに何らかのアドバイスするのではなく、まずは静かに話を聞いてみます。

周囲からすれば、そんなことで悩まなくてもとか、みんな同じで大変だよ、と思ってしまうようなことでも、本人にとっては非常に大きな悩みであり、場合によっては話すこと自体がつらい状態かもしれません。

世界メンタルヘルスデーでも、当事者の体験に耳を傾けるというのがテーマの一つであり、耳を傾けることで問題そのものを解決できなくても、その人の心の支えになる、とされています。

ただし、自分一人でその当事者の想いや相談の全てを背負う必要はなく、他の家族や親戚、友人、職場の人、そして医療機関や相談窓口など、支えてくれる人を増やしていくことも重要ですので、そうしたことも活用して、向き合っていくと良いかと思います。

いのちの危険があるとき

最後に、メンタルヘルスの問題が進行すると、死にたいとか消えたいという気持ちが強くなるとか、自分を傷つけてしまいそうになる、というケースがあります

こうした、命の危険が差し迫っている場合では、周囲の人だけでは無理に対応せずに、ためらわず119番に連絡し、救急車を呼ぶという対処も必要になります。

そこまで切迫していなくても、死にたいとか消えたいという気持ちが出てきて、どうしてよいか分からない場合には、すぐに何らかの相談窓口を利用していただければと思います。

厚労省が開設しているものでは、まもろうよこころ、というものがあり、24時間対応で電話相談やSNS相談などの支援があります。

民間のものでも、心に関する相談窓口がありますので、もしもの時は活用していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属