火傷は初期対応が肝心
先日、患者さんが低温やけどで来られました。
服の上から貼るカイロを、肌にじかに貼ってしまったため、真四角に火傷を負ってしまったのです。
火傷というと、熱湯や鍋などで起こる瞬間的なものが多いですが、およそ40℃から60℃程度の低めの温度でも、長時間肌が触れると低温やけどを起こすことがあります。
低温やけどは特に冬場、湯たんぽや電気毛布を長時間使う際に起きやすく、最初は痛みが弱いため気づかないことが多いです。しかし、表面ではそれほど重症そうには見えずとも、実際には皮膚の深い層まで熱が通り、損傷している場合が多く、気づいた時には重度の火傷になっていることもあります。
今回はこの患者さんのお話から、火傷そのものについて、今一度まとめてみます。
火傷の種類と重症度
まず、火傷は熱によるものを熱傷と言い、化学薬品によって起こる火傷は化学熱傷、電気による電撃熱傷などの種類があり、重症度は、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度の三段階に分かれます。
Ⅰ度は表皮だけの軽い火傷で、赤みやヒリヒリ感を伴い、数日で自然に治るものです。紫外線による日焼けもこのⅠ度の熱傷に該当します。
Ⅱ度は水ぶくれができ、浅い場合はピンク色で強い痛みを感じますが、深い場合は白っぽくなり、痛みが弱くなるのが特徴です。
Ⅲ度になると、皮膚が白色や褐色になって、神経が損傷するためⅠ度やⅡ度と比べると痛みがほとんどありません。
低温やけどは、知らず知らずのうちに長時間熱源にあたってしまうと、このⅢ度に至るケースもあるため、非常に危険なタイプになります。
詳しくは後述しますが、Ⅱ度から起こる、水ぶくれがある場合や、Ⅰどでも火傷の範囲が広範囲になっている場合は必ず皮膚科の医療機関を受診するようにしましょう。
応急処置の基本は「冷やすこと」
今回の本題とも言える部分ですが、火傷の直後の応急処置は、流水で30分ほど冷やし続けることが基本ですが、この冷やすという作業が極めて重要になります。
これは熱を冷ますのももちろんですが、例えば薬品や電気などが原因の場合には、付着した物質を洗い流す意味もありますので、とても大切です。
氷で冷やすのも有効ですが、氷を直接肌に当てるのは避けてください。
氷の温度が低すぎるため、火傷の上にさらに凍傷を重ねる危険があるのと、血管が収縮して治りが遅くなる可能性がありますので、氷を使う場合はタオルなどに包んで直接触れないようにするのがベストです。
もし服の上からお湯をかぶったなどで、服の上から火傷を負った場合は、その衣服は無理に脱がせず、服の上から冷水をかける方が安全です。ただ、指輪や腕時計をしている部分に火傷を負った場合は、その患部が腫れてしまうと外しにくくなるため、可能であれば早めに外してください。
前述に重なりますが火傷の範囲が広い場合は、全身を冷やしすぎると低体温になる恐れがあるため、応急処置程度に水をかけて冷やしたら、速やかに救急車を呼んで処置をしてもらってください。
低温やけどだと痛みが少なく、見た目もそれほど危険に見えませんが、Ⅱ度やⅢ度の可能性がありますので、必ず皮膚科のお医者さんに診てもらっていただければと思います。
体の内側からのケア
最後に回復を早めて、傷跡を残さない対策ですが、基本的には普通の怪我と同じで、湿潤環境が大切です。
感想せずに保湿した状態で、雑菌が入らないようにしていると治りが早くなります。
Ⅰ度であれば皮膚科のお医者さんから出る塗り薬を、Ⅱ度で水ぶくれがある場合はキズパワーパッドのような絆創膏を使うのがおすすめです。
そしてやはり、皮膚の再生に欠かせないのがタンパク質です。
前回の骨折でご紹介したのと同じく、体重60kgの方であれば1日あたり60〜90gを目安に、3食に分けて摂るようにしましょう。
皮膚においてはビタミンCや亜鉛といった栄養があると、皮膚の修復の助けになりますのでおすすめです。
またこちらも前回の骨折と同じですが、喫煙や過度な飲酒は血流を悪くしますので、結果的に治りが遅くなります。
火傷の傷跡は、治るまでの時間が長くなると残りやすくなるため、傷跡を残したくない場合は素早く治すことを心がけるのが良いかと思います。
もし万が一、火傷した部分の痛みが強い場合は、何かに感染して炎症が起きていたり、火傷がいつの間にか悪化している危険がありますので、痛みが引かない場合は必ずお医者さんに診てもらってください。
