辛さも賢く楽しむ!激辛の科学と体に効く付き合い方#930

辛い物は体に良いという説

先日、娘が激辛ペヤングを食べているのを目にしました。

そこで、辛い物は健康効果があった気がすることを思い出し、今回取り上げることにしました。

実は人間が普段感じる、辛いという感覚は、実は味覚ではなく痛覚に近いものとされています。

唐辛子の主成分として有名なカプサイシンは、痛みを感じる神経を刺激する働きがあり、それによって特有の熱さや燃えるような感覚を引き起こします。つまり言い換えると、唐辛子による辛みは厳密に言うと味ではなく、刺激になります。

今回は趣向を変えて、この辛さと健康効果についてまとめて行きたいと思います。

辛さの強さを測るスコヴィル値

唐辛子の辛さは刺激物ですが、もう一つのわさびによる辛さは、アリルイソチオシアネートという成分によるもので、これは冷たい感覚を引き起こす受容体を刺激するという働きにより、ツーンと鼻に抜けるような辛味を感じます。また、山椒の辛さは唐辛子とわさびの刺激を合わせたような特徴を持ち、ピリピリとしたしびれを起こします。

そして、辛さを表す単位として、スコヴィル値というものが使用されています。

これはカプサイシンの量を基準にしたもので、例えばハバネロはおよそ10万から30万スコヴィルで、世界で最も辛いと言われるキャロライナ・リーパーは200万を超えるほどの数字になっています。

ちなみに、辛さに強い人と弱い人がいるのは、遺伝的な要因はもちろんですが、日常的に辛いものを食べているかどうかなど、摂取頻度にも関係しています。

普段から辛いものをよく食べる人は、体が刺激に慣れることで反応が弱くなり、同じ量でも辛さを感じる度合いに違いが産まれます。

また、辛味をやわらげるには水を飲むよりも油や乳製品が効果的で、カプサイシンは油に溶けやすい性質を持っているため、乳脂肪を含む食材と一緒に摂ると辛味を中和しやすくなります。

辛いものに健康効果はあるのか

今回の本題ですが、辛いものを食べると代謝が上がるとか、免疫力が高まるといった話を耳にしたことがある人も多いと思います。

実は実際に、カプサイシンには確かに一時的に代謝を高めたり、食欲を抑えたりする働きがあると報告されています。

とある研究では、カプサイシンの摂取で1日あたり50から70kcalほど消費エネルギーが増え、1食あたりの摂取カロリーが約70kcal減るという結果も出ています。

ただし、前述のように食べるうちに体が慣れていくため、この効果は一時的なもので、ダイエットに効果があるとは言いにくいと思います。

また、辛いものを食べると免疫力が上がるという説には根拠はありません。

確かに、辛い物を食べると体温が上昇したり、一時的に汗を多くかきますが、それによって免疫力が上がるということはありません。

激辛の食べ物との上手な付き合い方

最後に、今回娘が食べていた激辛レベルの食べ物ですが、突然激辛のものを食べると胃の不調や胸焼け、下痢などを引き起こすことがあります。

カプサイシンは胃酸の分泌を促進するため、そもそも胃が弱い人や、逆流性食道炎、胃潰瘍などの持病がある人には危険な食べ物になります。

かなりまれな例ですが、激辛の食べ物を食べると雷鳴頭痛と呼ばれる激しい頭痛を引き起こしたり、心臓の血管が一時的に麻痺するケースも報告ありますので、充分注意してください。

こうしたリスクを避けるためには、辛さは自分が美味しいと感じる程度にとどめるとか、油ものの食品を同時に食べるのがおすすめです。

ちなみに、もし手や粘膜にカプサイシンが付着した場合は、水ではなく油分を使って溶かしてから、石けんで洗うと素早く落ちやすくなりますので、試してみていただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属