聴神経腫瘍って何?治療はどうなの?#841【リスナーからの質問】

神経に腫瘍が起こることが

先日、コメントにて「家族で聴神経腫瘍になった人が居て、手術をします」といったものを頂きました。

かなり聞き馴染みのない病かと思いますが、実は文字通り、耳の神経に腫瘍ができることがあります。

今回はこの聴神経腫瘍について、詳しくご紹介していきます。

耳の奥にできる良性の腫瘍

聴神経腫瘍とは、耳の奥のほうにある神経にできる腫瘍のことです。

神経を圧迫するため、張力や平衡感覚に影響が起き、初期症状としては片方の耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴りやめまいなどの症状があります。

一般的には、若い人で発症することは少なく、40代以上の中高年の方で、若干ですが女性のほうがなりやすいとされています。

特徴的なのが、悪性腫瘍やがんになることは極めてまれで、大半が良性という点です。

ただ、腫瘍自体は進行することで大きくなるため、聴神経から顔面の神経を圧迫したり、深刻になると脳幹や小脳を圧迫する恐れもあり、危険な病と言えます。

腫瘍があるものの神経は圧迫しないこともあるため、症状が無いまま腫瘍が大きくなることもあり、見つけるのが遅くなることもあります。

難易度の高い除去手術

もし聴神経腫瘍が見つかったら、まずは大きさを調べます。

腫瘍が小さく、特に症状が無ければ少し様子を見ますが、逆に腫瘍が目立つ大きさで症状も出ている場合は、切除手術を検討します。

手術は、聴力を残すことを重視するか、腫瘍をとりきることを重視するかを選ぶことが多いです。

聴神経腫瘍は、神経に腫瘍ができる病ですので、全てを取り除こうとすると神経が傷つき、聴力に影響が出たり、最悪失う可能性もあります。

腫瘍の場所と大きさ、そして起きている症状なども含めて考慮して、最適な選択をする必要があるのです。

方法としては、一般的な内視鏡などで使うものと同じですが、小さい腫瘍であれば放射線を用いたガンマナイフ、サイバーナイフといった方法もあります。

これらの方法だと、高齢者で体力や回復力に不安がある方や、脳の近くに腫瘍があって通常の手術だと難しい方でも、安全に取り除くことができます。

ちなみに、医師によっては、小さい腫瘍でもなるべく早くとるように勧める方もいると思います。

例えば一度ガンマナイフで除去しようとしたとき、完全に取り除ききれなかった場合はそこから再度増える可能性があるうえに、その箇所は神経と強く癒着しているため、完全除去が極めて難しくなります。

ですのでガンマナイフなどは使わずに、最初から開いて、腫瘍をしっかりと取り除くように手術したほうが確実、という選択もあるのです。

遺伝の要因が大きい

聴神経腫瘍は、メカニズムがわかっていない病の一つですが、遺伝的な影響が大きい可能性が高い説があります。

ですので、一般的に健康的な生活をするのは基本ですが、意識して予防するというのはほぼ不可能と言えます。

できることは、とにかく早期発見に尽きます。

原因不明の耳鳴りやめまいがあれば耳鼻科のお医者さんに行くとか、無症状の場合もあるので40代以上であれば脳ドックなどでMRIを定期的にとるようにして、逐一判断していくのが良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属