10月から始まる薬局での選定療養って何?#835

薬局での選定療養がスタート

薬局の10月からのニュースに、選定療養がスタートする、というものがあります。

選定療養とは、一言で言うと保険適用の医療と、保険適用されないその他のサービスを合わせて行える、という制度のことです。

この制度は、これまでは薬局でのお薬には適用されず、全額が保険適用か、全額が自費かの二択でした。

しかし、2024年10月から、より患者さんの希望に合わせた、自由度の高い処方が出来るようになったのです。

今回はこの、薬局での選定療養について詳しくご紹介していきます。

選定療養制度とは

選定療養制度は、分かりやすい例だと、病院に入院した際、個室などの特別室を利用したい場合は、その費用の全額は保険適用にはならず、最低限の一部だけが保険適用され、差額は保険は適用されず、自費で払う必要があると思います。

また歯医者さんで、被せ物や差し歯をする際、銀歯だと技術代と本体代金を含めて保険適用がされますが、セラミックだと本体代金部分には保険は適用はされず、自費で払う必要があります。

さらにはリハビリも、保険適用は施術の回数で決まっており、所定の回数以上のリハビリをする場合は患者さん本人が決める部分となり、費用は自費となります。

このように、保険適用される治療の部分と、保険適用されずに自分で選べるサービスの部分があるものを、選定医療と言います。

ちなみに似たようなもので禁止されているのが、混合診療です。

同じ病気の治療において、保険診療の範囲は保険が適用されるものの、その他の医療の部分は自費になる、というもので、これは一律で禁止されております。

例えば、視力を向上させるレーシック手術というものがあります。レーシック手術は保険適用外なため、手術費用は全額自費になります。

本来は保険適用の手術であれば、手術と同時に、術後に処方される痛み止めや化膿止めと言ったお薬にも保険が適用され、自己負担は総額の一部で済みます。

しかし、レーシック手術の術後のためにお薬が処方された場合は、手術と同時にそのお薬にも保険は適用されず、総額を自費で支払う必要があります。

保険適用と自費の混合が出来るのは前述のような、入院の病室のグレードアップや、被せ物や差し歯の素材、リハビリの回数など、医療では無い部分に限定されるのです。

先発医薬品とジェネリック医薬品の選定療養

そうした選定療養制度が、10月から薬局でも可能になったということです。

これはやはり、ジェネリック医薬品と先発医薬品に関することが主です。

簡単に説明すると、例えば風邪のたん切りのお薬と咳止めのお薬が、同じ名前で出ていることがあります。

製品名で言うとジェネリック医薬品がカルボシステイン、その先発医薬品がムコダイン、デキストロメトルファンがジェネリック医薬品でメジコンが先発医薬品となりますが、こうしたものは処方せんには一般名で書かれており、従来であればどちらも自由に選ぶことが出来ました。

しかし、10月以降はその両者には差が付き、差額分を支払う必要が出てきます。

その式は、ジェネリック医薬品を使った場合で最も高額になる場合の値段と、先発医薬品との差の4分の1が自己負担となります。

先発医薬品とジェネリック医薬品の保険適用に差が

以上を踏まえると、ジェネリック医薬品があるもので先発医薬品を希望するという場合だと、一律で自己負担が増えるように思われそうですが、実はお薬にも保険適用に差があり、負担が増えない場合もあります。

先発医薬品では、発売から数年後に、新たに効能と効果が認められ、発売した製薬会社が新たに薬効として記載するケースがあります。

その場合、そのように後から追加された効能効果は、その先発医薬品の特許に加わるのみで、特許が切れていない場合はそのお薬のジェネリック医薬品の効能と効果には、追記ができないのです。

これは例えば、ある血圧のお薬で、5年後になって心臓への効果が分かり、心臓用のお薬としても有効ということが認められ、お薬の効果として記載することになったことがあります。

このとき、そのお薬のジェネリック医薬品は、血圧のお薬として販売することのみを認めて発売したため、心臓のお薬としての効果は記載は出来ません。

その結果、先発医薬品では血圧と心臓用のお薬になり、ジェネリック医薬品では血圧のみのお薬として使われることになりました。

つまり両者は全く同じもので、効果も同じにもかかわらず、販売の上で大きな違いがあることになり、保険適用の差額は発生しないことになったのです。

他には、ジェネリック医薬品だと一包化しやすいものの、先発医薬品だと片方だけが一包化するのが難しいものも、選定療養には当たらないこともあります。

また、患者さんのアレルギーや、飲みやすさ飲みづらさといった、患者さんごとに事情がある場合も、医療上の必要性があると認められるため、選定療養には該当しません。

制度が変わるというと難しそうに思えますが、これまで通り先発医薬品とジェネリック医薬品の選択は可能ですので、不安があれば薬剤師に是非相談してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属