歯周病菌が滞在する場所
先日飲み会があり、自分とお医者さんともう一人、腸内細菌を研究されている方と、3人で話した機会がありました。
その中で、歯周病菌という菌は、実は体の様々なところにいる、ということが分かったという話が出ました。
歯周病というと、歯ぐきが腫れるとか口臭が気になる、歯がぐらつくなどの症状が主で、最終的に進行すると歯が抜けるという病で、部位としては口の中で起こる病、というイメージが強いものでした。
しかし現在、歯周病は単なる歯や歯ぐきのトラブルではなく、全身の健康にも影響を与える可能性がある病気として考えられるようになっているのです。
今回はこの飲み会から出たお話を中心に、歯と歯周病についてまとめてみたいと思います。
歯周病とは
歯周病についてもう少し具体的におさらいすると、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢や歯石、つまり細菌の塊によって炎症が起こる病のことです。
初期には歯ぐきの赤みや腫れ、歯磨き時の出血程度で、そこから進行すると歯を支える骨が徐々に減り、歯がぐらつき、最終的には抜けてしまいます。
歯周病はいわゆる虫歯で起こるような強い痛みが出にくいため、自覚症状が少なく、気づかないまま進行してしまう点が特徴です。
歯周病の炎症が重い負担に
歯周病が全身に影響を与える理由は大きく二つあり、一つが歯茎で起こっている炎症にあります。
炎症が長期間続くということは、体の中で慢性的な、小さな炎症が起き続けているということで、いわば小さな火種がずっとくすぶっているような状態になります。
以前アレルギーの回などで触れましたが、炎症は火事のようなもので、症状が小さいうちはすぐに治まる可能性もありますが、大きく進行すると長引き、治るのに時間がかかります。
歯周病もこれと同じなうえ、体内で小さな炎症が長時間続いていくことで、血管や免疫、血糖値など全身に影響を与える可能性があると考えられるのです。
そしてもう一つは、歯周病菌やその成分が、出血した歯ぐきから血液中へ入り込んだり、飲み込んでしまうことで腸まで到達することです。
飲み込んでも通常は胃酸によって多くの菌が死滅しますが、一部は生き残ってしまい、大腸や消化管で定着する可能性があるとされています。
歯周病と糖尿病・がんとの関連
ちなみに、歯周病は糖尿病やがんと関係があるとされており、例えば糖尿病によって免疫力や傷を治す力が低下すると歯周病が悪化しやすくなるとか、反対に歯周病による慢性的な炎症が血糖コントロールを乱してしまい、糖尿病を悪化させる、という説もあります。
そのため、血糖値が高い人は内科だけでなく歯科でのチェックも重要とされています。
また、大腸がんや膵臓がんなどのがん組織から歯周病菌が検出されたという報告も出ています。
これらはあくまでも、歯周病があると必ずがんになるとか、糖尿病になるというわけではなく、がんには加齢や喫煙、飲酒、食生活、遺伝などさまざまな要因がある中で、その一つとして歯周病が関係している可能性がある、という段階です。
当然、研究もまだまだ進行中ですので過度に不安にはならないように注意してください。
ちなみに薬剤師として気になったのが、胃酸を抑える薬を長期間服用している人ほど、大腸で歯周病菌が多く見つかった、というお話です。
これは胃酸が弱まることで、本来なら胃で死滅するはずの菌が腸まで届きやすくなるためではないかと考えられますが、事実であればとても興味深いお話でした。
これもあくまでも研究段階のお話ですので、決して自己判断で薬をやめたりはしないでください。
歯垢をためないように
歯周病予防の基本であり、最も重要なことは、歯垢をためないことに尽きます。そのために必要なのは、毎日の丁寧な歯磨きです。
特に重要なのは寝る前の歯磨きで、睡眠中は唾液の分泌が減り、口の中を洗い流す働きが弱くなるため、細菌が増殖しやすくなります。そのため、就寝前にしっかり歯を磨くことが非常に大切です。
そして、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間には、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってください。自分に合うサイズや使いやすいタイプを選んで、継続してこまめに使い続けることが重要になります。
もし歯垢がたまって歯石になってしまうと、自宅の歯磨きでは除去できませんので、定期的に歯医者さんに行ってクリーニングしてもらうのももちろん効果的です。
ちなみに、抗ヒスタミン薬などのお薬の影響で、口が乾きやすくなる薬を飲んでいるという方は、唾液の減少によって歯周病や口臭のリスクが高まるということもありますので注意してください。
また前述の胃酸を止めるお薬も、もし長期的に飲んでいる場合は、本当にずっと飲む必要があるのか、お医者さんと相談してみるのがおすすめです。胃酸を止めるお薬は強弱がありますので、時間が経って症状が落ち着いていれば、変えるという選択肢もありますので、検討してみてください。
