盲腸って本当に要るの?虫垂炎との関係は?#862

虫垂炎と盲腸

先日、自分の知り合いが急性虫垂炎で緊急入院しました。

昔は虫垂炎と言うと、すぐに手術で取り除くものとされており、「盲腸は不要な器官」というイメージがありました。

しかし実は、近年になってその役割が見直され、再評価されています。

今回はこの、盲腸という器官と、虫垂炎という病について、少しご紹介していきます。

虫垂の役割

まず虫垂と盲腸ですが、盲腸はお腹の右下あたりにある、大腸の始まりあたりの部分のことを指します。

虫垂は、盲腸の先端あたりから伸びている、細く突起している部分のことを指します。

虫垂は通常、腸内の善玉菌の避難場所として機能し、腸内環境の整備に貢献する器官です。

例えば、何らかの雑菌が腸に侵入した場合、善玉菌は一時的に虫垂に避難して、腸内のバランスを守り、環境を素早く回復できるよう態勢を整えます。

さらに虫垂そのものにも、免疫細胞を作り出して腸内の病原菌と戦うという働きがあることが分かりました。

一昔前までは、免疫機能への影響は全く分かっていませんでしたが、近年になってこれらの機能が分かり、虫垂は健康維持にとって大切な存在である、と言われるようになったのです。

虫垂炎の症状と治療法

今回取り上げるきっかけとなった虫垂炎ですが、文字通り虫垂が炎症を起こす病気のことです。

原因は便が詰まったり、消化できなかった異物が入り、細菌感染が起こって炎症となることが多いです。

初期症状としては激しい腹痛、吐き気、発熱、そして食欲不振などが挙げられます。

腹痛は右下腹部に集中し、進行することで痛みがどんどん激しくなっていき、さらに重症化すると虫垂が破裂してしまい、細菌が腹腔内に広がって腹膜炎を引き起こします。腹膜炎は命の危険もあるため、明らかに不自然な激しい痛みが起こった場合は早めに病院に行ってください。

治療については、現代では抗菌薬での治療が一般的で、軽度な炎症であれば手術はしないことが多いです。

しかし、症状が進行したり重症化した場合には、手術をすることもあります。

ちなみに虫垂炎がなりやすいのは、10代から30代の若い方が多くなっているため、もし心当たりがあれば注意してみてください。

虫垂炎の予防と生活習慣の改善

虫垂炎そのものの予防法は確立されていませんが、やはりまずは腸内環境を整えること、便秘を防ぐことが、虫垂炎のリスクを減少させる方法になります。

特に便秘は、腸内に圧力がかかるため、ダメージとなって炎症を引き起こす可能性が高いですので便秘対策は大切になります。

食事で言うと食物繊維を豊富に含むものを食べて、適度な運動、水分補給も腸内環境の改善には効果的です。

しばしば、1日に2リットルの水分が必要と言われることがありますが、これは水を2リットル飲む必要は無く、野菜や果物など、食事での水分も含んでの数字ですので、目安として考えていただければと思います。

そして当然、ストレスも腸の健康に大きな影響を与えるため、日頃からストレスを軽減するのも重要になります。

もし、虫垂炎かもと思われる場合は、早めにお医者さんに診てもらってください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属