新型コロナは5類になったらどうなるの?#680

5類引き下げが正式に決定

新型コロナウイルス「covid-19」の感染拡大から丸3年となる今年、ついに日本国内で5類相当への引き下げが決定されました。

まだ議論中ですがすでに大詰めの段階で、早ければ4月中にも移行となる見通しです。

国会本会議場でも首相がマスクを外して演説を行うなど、ようやく大幅な転換を迎え始めた「新型コロナ」について、現時点での最新情報をまとめて行きたいと思います。

現在の感染状況

始めに現在の感染状況についてですが、東京では昨年末12月28日に1万7000人となったのをピークとして、少しずつ減少している傾向にあります。年末年始の休みが終わった後わずかに増加に転じましたが、現在は減少してきています。

これは、正月休みを終えて仕事始めの際に検査をしたところ陽性ということが分かった、というケースが多いためと考えられます。

ただ、現状の感染者数という数字は、実は難しくて以前よりはあてにならない数字、と言えます。

少し前から、陽性となっても陽性者登録をしない患者さんがいる、という問題がありますが、これは診察時に「支援が必要であればしてください」という風に言われることがあるためです。

陽性者登録をすることでコロナの治療費が無料となったり、万一後遺症となった際の支援などがありますが、現在は無症状で自宅待機をするだけで大丈夫という方が多く、登録をしないという選択をする方が非常に多いのです。

また、65歳未満の方は抗原検査で陽性であれば、症状の有無にかかわらず自分で陽性者登録ができますが、65歳以上の高齢者の方は軽症や無症状だと、自力の検査では陽性者登録ができないというシステムになっているのも一つです。

65歳以上の方は、発熱外来など病院での診察を受けて、そこでの検査の結果陽性であれば登録となりますが、病院に連絡する際に「症状があれば診察を受けて、症状が無ければ自宅待機で様子見を」と電話で言われるというケースが多いのです。

その結果、診察を受けられないがために、感染していたとしても陽性者として登録、記録されないのです。

こうしたことを考えると、はっきり言って感染者数の数字は前ほどはあてにならないと断言できます。

感染者数の最大のピークは昨年夏でしたが、今はもしかしたらそれと同じぐらいか、それよりも多い可能性もあると思います。

また、重症者数と死亡者数は以前から感染のピークから2週間ほど遅れて増えて来ますが、先日1月10日にピークを迎えてそこから徐々に減少してきています。

その重症者死亡者の数字で見ると、夏場の感染拡大時期よりも多いため、やはり感染者数はそのころと同じか多い可能性はあると言えます。

5類のメリットとデメリット

感染者数は多いものの、実際には無症状の方が極めて多く、冬が終わるごろを目安に5類への引き下げが決定されましたが、5類になる最大のメリットは自宅待機の措置が完全に無くなります。

現在、陽性と認定された場合は、登録をせずとも強制的に自宅待機が命じられます。

発症日を起点、0日目として7日が経過して、さらに症状が回復して24時間経てば外出が認められます。

また感染者と濃厚接触があったと認められた場合も、最後に接触した日から5日間は自宅待機となっています。

現状、これを守れてる人が居るかどうか、そして現状の制度の中で濃厚接触者と認められるケースがあるか疑問な点もありますが、これらは現状では法的に定められています。

5類になると、こうしたことが完全に無くなります。

簡単に言えば、感染者が自由に行動するようになり、今まで以上に感染が広がりやすくなることに直結します。

また、現在は行政や保健所が陽性者の症状確認や病床の確保、入院の調整といったことをしていますが、こうしたことも無くなり、さらに病院でも新型コロナ用の病床確保やゾーニングといった処置も撤廃されます。

見方を変えれば、院内感染を防ぐために、独自に受け入れを停止する病院が出てくる可能性ももちろんあります。

さらに、これまでは新型コロナに感染して陽性と登録した場合は、検査や治療にかかる費用は全て公費で支払われ、自己負担がありませんでしたが、5類になることでインフルエンザ等と同じく、3割の自己負担がかかります。

3割の自己負担の例を挙げると、ラゲブリオというコロナの治療薬がありますが、これは1回の治療、処方でおよそ10万円程度必要になります。

10万円の3割負担ですので、単純計算で3万円が自費で必要になるという事です。このことによって受診を控えた結果、長引いてこじらせてしまい重症化する、という可能性も充分考えられます。

ただし、これらはあくまで完全に5類になった場合のことで、新型コロナに関しては段階的に制度が変わっていく見通しとなっています。

感染力は弱まっていない

外国人観光客も全国的に急増して久しく、また5類引き下げも現実味を帯びて来た現在、ウイルス自体の感染力も弱まったように思えますが、実は全く弱まっていません。

いわゆる全数把握をしなくなったというだけで、ウイルスそのものの感染力は衰えておらず、冬場ということもありインフルエンザ等も含めて活発に活動をしています。

ですので、やはりこれからも感染対策は必要になると言えます。

今までは濃厚接触者や感染者は5日間程度の自宅待機が義務付けられていましたが、今後近いうちにそうした処置が完全に無くなり、これまで以上に市中感染の中で暮らすことになります。

ですので自分の生活環境等を踏まえて、実際にどこまで、どれぐらい気を付けるかを考えるのも必要ですが、ひとまずはこれまでやって来た手洗い手指消毒、距離をとること、換気をするといったことは、これからも引き続き感染予防に充分つながっていきます。

マスクについてですが、これは現在だと自己判断で良い部分もあります。

マスクを外したいという方も多くなってきており、またマスクはもともと感染を広げないためのものですので、咳などの症状がある方は今後も出来るだけつけることを強くお勧めしますが、そうでなければコロナ前のように外すという選択肢も出てくるとは思います。

逆に無症状でも感染していれば、自分が感染力を持っている可能性はあり、さらにマスクに感染予防効果が全く無いということは無いため、自己防衛のためにつけるという選択肢ももちろんあります。

5類引き下げとなって元の生活に戻っていくことは確かですが、言い換えれば自己判断となる部分も増えて来ますので、自分の生活に合わせて考えて行くようにしましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属