塗り方が大事!アトピー性皮膚炎とステロイド外用#679

アトピー性皮膚炎で使う「ステロイド外用剤」

前回、貼り薬について触れましたが、今回はそれに少し関連して、アトピー性皮膚炎とステロイド外用剤のお話です。

貼り薬も塗り薬も、処方の際に使い方の指導が不十分なケースが多々あり、不安に思う方も多く、問い合わせも昔から結構寄せられているお薬になります。

アトピー性皮膚炎などについてはvoicyでも度々取り上げていますが、また今一度、おさらいしていきたいと思いますので是非ご覧いただければ幸いです。

角質のバリア機能が著しく弱まった状態

まず、アトピー性皮膚炎という病ですが、簡単にまとめると、お肌の一番外側の角質層の部分が何らかの原因で著しく弱まった状態です。

角質層が弱いという事は、外部の刺激物質が真皮やその下の皮下組織まで入りやすくなり、入って来た刺激物質を排除しようと免疫細胞が活発になり、アレルギー反応が起きます。

これが肌荒れ、かゆみの原因となりますが、アトピー性皮膚炎だとかゆみを感じる神経細胞が皮膚の表面近くまで伸びているため、さらに一層かゆみが感じやすくなってしまい、非常に敏感なお肌になるのです。

そうなると意識していても自然にかいてしまい、かくことで角質のバリアが一層弱まり、さらに刺激物質が入ってきて、またアレルギー反応が起きかゆみが増す、という悪循環になります。

外部物質は単なる雑菌はもちろん、ハウスダストやペットの持つ物質、自らの汗や老廃物も余計な刺激と認識してしまい、かゆみの原因となることがあります。

一昔前には食物アレルギーがある子供はアトピー性皮膚炎にもなる、という風に言われていた時期もありますが、これはアトピー性皮膚炎でバリア機能が弱くなって過敏になっているところにその食べ物が触れて、それが刺激となってアレルギー反応が起きることで、その食べ物のアレルギーになってしまうということが分かりました。

食物アレルギーがあるからアトピーが起きるのではなく、アトピーでアレルギー反応が出やすいところに食べ物が入ると、その食べ物のアレルギーが起きるのです。

かなり厄介で深刻な病ですが、治療の三本柱をすべて、しっかりとやっていくと、症状は徐々に改善していきます。

そのうちの一つが、今回のタイトルともなる「ステロイド外用剤」です。

アトピー性皮膚炎の治療で必要な3つの要素

アトピー性皮膚炎は、スキンケアと薬物治療と、悪化原因の除去の3つを入念にやっていくと、少しずつですが治療ができる病です。

言い換えれば、この3つ全てを入念にやらなければ、治療はかなり難しい病でもあります。

まず、スキンケアはいわゆる保湿のことで、基本的なもので大丈夫なのでこまめに保湿することが重要です。

アトピーは皮膚の表面のバリアが弱くなっているため、保湿して保護することで、刺激物質が入って来るのを防ぐことができます。

これはは症状が引いて治った後も重要で、アトピーは基本的にお肌が弱いという状態ですので、日ごろから継続してスキンケアすることが必要です。

スキンケアと言っても乾燥肌の対策と同じで、お風呂上りにクリームやローションなどで保湿をするだけで大丈夫です。

次の薬物治療ですが、かゆみ止めのお薬と、今回のタイトルのステロイド外用剤との併用です。

まずかゆみ止めですが、かゆみがあるとどれだけ意識をしていても多かれ少なかれ触って、かいてしまうため、治るのがどんどん遅くなります。

また、かゆみがあると睡眠にも影響が出てしまい、大きなストレスにもなるので、まずはかゆみ止めを使ってかゆみを止めることが大切です。

ステロイド外用剤とは、詳しくは後述しますがアレルギー反応を落ち着かせるためのお薬で、アトピーで炎症が起きて荒れたお肌を回復させることができます。

最後の悪化原因の除去ですが、これは何がお肌にとって刺激になっているかを把握して、それに触れないように取り除くということです。

例えばハウスダストであれば、こまめに掃除をしたり、壁紙や家具を変えるなどをして排除するとか、肌着をこまめに換えて余分な汗や皮脂がお肌につかないようにして保護していき、お肌の回復を早めていきます。

この3つをしっかりと行って治療していきますが、ステロイドと聞くと不安があったり、使うのに抵抗がある方もいるかもしれませんが、体質に合わせて指示通りに使って行けば問題はなく、そして替えが効かないほど優れたお薬ですので、使う事をおすすめします。

ステロイド外用剤の塗り方

ステロイドのお薬を塗ると、一瞬は良くなるけど辞めたら元に戻る、という事がしばしば起こりますが、これは簡単に言えばきちんと塗れていないことの表れです。

表面だけが治って、皮膚の深い部分までは治っておらず、結果的に再発するという事です。

塗り続ける目安としては、見た目ではなく手で触れた感触で判断するのがベストです。触ってみて、アトピーが起きていないところと比べて遜色がなくなるまでは塗ってください。

触れた時になんかカサついているなど、何らかの違和感がある場合は治っていない可能性が高いため、根気よく、お薬を塗って保湿を続けてください。

そしてもう一つ、しっかりと厚く塗ることも必要です。薄く塗ると量が足りず、治りづらくなりお薬も効きづらくなるため、厚めにしっかりと塗るようにしてください。

厚めに多く塗ると、副作用が大きく出るように思われそうですが、皮膚に吸収されるお薬の量は決まっているため、厚く塗ったからと言って吸収され過ぎて効果が変わることはありません。

ステロイドと言うと副作用が強いイメージが多く、確かに免疫力が下がるという点はありますが、そうした副作用の大半は飲み薬のステロイドのお薬で、アトピー用のステロイドの塗り薬では、そうした副作用はまず起きません。

また、ステロイドの塗り薬を使い続けるとお肌が黒ずむ、と言われることがありますが、これはお薬が上手く効いていない現れで、炎症が長続きしているという証拠ですので、お薬の種類を変えるなどをしたらだんだんと消えて行きます。

稀に使っている部分の皮膚が薄くなるとか、にきびができやすくなるというケースもありますが、その場合も種類を変えたり、塗る間隔をあけたり保湿を一層入念にするなどをしたら改善できますので、不安なことがあれば是非、お医者さんや薬剤師に相談してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属